同居人が最近余所余所しい

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数週間前。初めて健の一糸纏わぬ姿を見た。 興奮しなかったと言ったら嘘になる。けれど、賢太郎の心持ちとして、健に対する心配の方が勝っていた。健が始まる前から生気のない顔をしていたからだ。 健の怯えた表情が心に焼き付いている。まさか、そんな目で見られるとは思わなかった。彼が相当不安になっていることが分かったから、抱きしめて、好意を伝えて、名前を呼んだ。健の身体はとても冷えていた。 健はそれでも頑張ってくれていた。目を瞑って耐えていた。初めてのことで不安だったのだろう。賢太郎もそういうことは経験が無かったので、健の様子を見ながら手探りで事を進めていった。 首筋を舐めると息が上がる。胸を触ると身体が跳ねる。 健の変化を全て覚えて、全身にくまなく触れる。手足は冷えていたけれど、健の身体の中心は緩く熱を持っていた。だから、賢太郎も自然と期待が高まっていく。健の全てに触れられると思っていた。 ……恋人だから立ち入れる領域に、足を踏み入れてみたかった。例えば、今は無理でも、いつかは賢太郎を受け入れてくれるかもしれない所。入れるのは無理でも、その周辺に触れて、存在を確かめたかった。 けれど、健に腕を握られて制止された。 「賢太郎、ごめん。無理だ。」 その時初めて、賢太郎は自分の手も冷え始めていたことに気づいた。健の顔が苦痛に歪んでいて、少なからず衝撃を受ける。何処で間違えてしまったのだろう。まだ二人には早かったのだろうか。疑問が頭を埋め尽くすばかりで、答えは返ってこない。 健は謝罪を繰り返すばかりで、一緒の布団にも入ってくれなかった。だから、健が寝た後に勝手にベッドに潜り込んで、後ろから抱きしめた。健は起きてくれなくて、余計に寂しさが募った。
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