第6話

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第6話

 椎名は大学近くのマンションで一人暮らしをしている。俺たちが初めてセックスしたのもマンションの寝室だ。椎名は会社を持っているので、ファミリー用の三LDKの部屋に住んでいて、その一室を事務所として使っているらしい。  「おまえ本当に大学生か?」と、初めて来た時に思わず呟いてしまったのを覚えている。  部屋の前に着くと、椎名は鍵をもどかしそうに開けて俺を開いたドアの向こうに押し込んだ。そして靴を脱ぐ間も与えずに俺を抱きしめた。 「陽向……愛してる」  俺の顔中にキスの雨を降らせながら、服を脱がしにかかる。 「ちょ……っと待て! ここじゃダメだ、か、ら……! あとシャワーくらい浴びさせろ。さっき走ったから軽く汗かいてるっ」 「ダメ。シャワーなんてしないで。陽向の汗も体臭も全部全部俺のものだから。誰にも渡さない」  いやいやいや、別に誰かに渡すものじゃないから。っていうかそんなのもらって嬉しがるやついないから。 「お、俺が嫌なんだってば! こら!」 「俺、陽向の匂い大好き。嗅いでるだけで勃つ」  おーい! 嗅ぐ前から勃ってますからー! ってかいつの間に俺押し倒されてるのー? 「だーかーらー! 待て! ステイ!」  椎名の目の前に手を立てて動きを制する。この時点で既に俺は上半身裸で、ジーンズの前立までパカーンと開いている。何という早業なんだ椎名よ……。 「ステイって……犬じゃないんだから」  イケメンは拗ねてもイケメン……と。俺のイケメン観察日記にまた一行追記された。 「躾のなってない大型犬だ、今のおまえは」  椎名の後ろで黒くて長めの尻尾がぶんぶんと振られているのが見えるぞ、俺には。この尻尾は……ジャーマンシェパードだな、うん。 「……この際犬でも何でもいい。早く陽向を抱きたい」  首を舐めるな! 尻を撫でるな! そして勃ったものを押しつけるな! マウンティングか!  俺は椎名の目の前で人差し指をぴんと立てた。 「椎名……風呂に入らせてくれたら、フェラしてやる」  そのひとことで、椎名の動きがぴた、と止まった。  前回は俺は初めてだったので、椎名のされるがままになっていたいわゆるマグロ状態だった。だから今回は、俺も椎名に何かしてやりたいと思っているのだよ。  どうだ椎名~たまには俺に振り回されやがれ~。  椎名の喉元からごくり、と生唾を飲み込む音がした。 「……分かった。その代わり俺も一緒に入る。ダメなら今ここでするよ?」 「っ、」  そう返されるとは思わなかった。やっぱりこいつにはかなわないわ。 「ちょ……っと待て。まだ洗ってな……い、から!」  だから一緒に風呂に入るのは嫌だったんだ……!  俺がシャワーでかけ湯をしている時に椎名は入って来て、俺を後ろから抱きしめた。  もうね……俺の腰に椎名の椎名が当たってますからね。うん、臨戦態勢ってやつですね。  椎名は手に持っていたものをバスルームの棚に乱暴に置いた。 「……」  はい、ローションとゴムです。用意周到、やる気まんまんですね、椎名さん……。 「なぁ椎名」 「んー?」  後ろから俺の胸を弄ったり、首筋にくちびるを押し当てたりしながら、椎名は気のない返事をする。 「もし、今日は俺がおまえに挿入(いれ)たい、って言ったらどうする?」  椎名はびくりとして動きを止めた。 「……陽向、上になりたいの?」 「だって初めてした時、俺が上でもいいって椎名が言ったんだよ? 今日は俺が挿入る側になってみたいなーって」  にーっこりと笑って振り返る。 「う……、陽向がそう、言う、なら……」  明らかに動揺してるなー。まぁ気持ちは分からないでもないや。いざ挿入られるとなったら怖いよな。俺だって最初怖かったもんな。  固まっている椎名を尻目に、俺は鼻歌混じりにボディソープで自分の身体を洗っていく。  全身を洗い終えて。顔色を少し悪くしながら考え込んでいる椎名の目を覗き込み、 「なぁ~んてな、冗談だよ。俺、おまえを抱く気なんてないよ? 身体洗いたいのにおまえがくっついて離れてくれないから、ちょっと脅しただけだよ」  へへへーと笑いながら本音を明かすと、椎名は目を見開きそれからため息をついた。 「陽向……可愛い……」  頬を染めて呟く椎名。この場面でもそれか! どんだけ俺のこと好きなんだ! 「さて、と。身体も洗えてさっぱりしたし。約束通り」  呟いて。俺は椎名の前の跪いた。俺の目の前には、凶悪なほどガチガチになった椎名自身。俺のよりもだいぶ大きいそれは、触れたら熱くて火傷しそうだ。先端からは先走りが既に零れている。それをぺろりと舐めてみる……まずっ。同時に、屹立がぴくりと動いた。それから軽く握りこみ、歯を立てないように気をつけながら口に入れた。 「は……陽向が俺のを咥えてるとか、感動のあまり泣きそう。でも泣かない。涙流してたら陽向の可愛い姿がぼやけるから」  椎名が天井を見上げて息を吐き出した。  大げさだなぁ……と思いながら、俺は俺で椎名への奉仕を続けた。自分以外のものを触ったことも、ましてやフェラなんてしたことない。だけどまぁAVとかで観たことあるし、初めて椎名とセックスした時にしてもらったから何とか……。  と思ったけど! 顎が痛ぇ! 普段こんな大きく口を開けないから疲れるし! しかも全部入りきらないときた。ちょっと冒険して喉の奥まで入れてみれば嘔吐いちゃうし。くそっ、涙出てきた……。 「ん……んっ、ん」 「陽向……つらかったらやめていいから」  椎名の手が俺の髪を優しく撫でる。  ちょっとだけつらい……でもやめない。俺のことを好きで好きでしょうがない椎名のこと、俺も好きだから。俺の気持ちもおまえと同じくらい大きいってこと、示してやりたいから。  好きだっていう気持ちを込めて込めて込めまくって、口を動かした。  どれくらい経っただろう。いい加減口が痺れてきた頃、咥えた椎名自身が質量を増したように感じた。
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