第7話

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第7話

「ひ、なた……口に、出していい……?」  上から余裕のない声が落ちてきた。見上げると息を荒らげる椎名が揺れた瞳で俺を見つめていた。そんな姿すらすごく愛おしい。俺は椎名に分かるように小刻みに頷き、喉の奥までそれを迎え入れ、吸い上げた。  俺の髪に触れる椎名の手に力が籠もり、 「っ、ん……っ」  その大きな身体をぶるりと震わせ、俺の口に精を放った。どろっとしたものが口の中に溜まっている。  あーまずい、くっそまずい。当たり前だけど精液の味なんて初めて知ったわ。よく苦いって聞いてたけど苦くないし! むしろしょっぱい気がしてる。  吐き出してぇ……吐き出したいけど……。ベッと出したら椎名が泣いちゃうかも知れないと思って。 (よし、俺も男だ……飲むか!)  どうしてここで男であることを確認してから精液を飲み込まねばならんのか、自分でもよく分からなかったけど。とにかく勢いで飲み込んだ。  ごくん、と嚥下する音がやけに響いた。  うわぁ……これ、喉に残るなぁ……うがいしてぇ。 「まずい……」  そんな言葉が聞こえた時、椎名が俺の心の声を代弁しているのかと思った。いやマジでまずかったからね。  だけど見ると、何故か椎名の瞳からぽろぽろと涙が溢れていて。 「えぇえええっ、ど、どうした椎名!?」  びっくりして慌てて立ち上がり、椎名の涙を拭ってやった。 「ひ、陽向が……俺の出したやつを飲んでくれたんだと思うと……感動したというか……たまらなくなった……」  は、吐き出さなくてよかった……。っていうかどっちにしても泣くとかマジかよ。  そう思うのと同時に、椎名の可愛らしさに胸がきゅーと締めつけられた。 「椎名……おまえ、ほんっとに俺のこと好きなんだなぁ……」  ため息を混じえながら苦笑する。頭をがしがしと撫でてやると、椎名はこくこくと頷いた。 「……好きだ。陽向さえいれば何も要らない」  未だ流れ続ける涙をさらに手の甲で拭き、それから俺は無言で椎名の全身をスポンジで洗った。椎名は俺にされるがままになっていた。  シャワーで泡を洗い流した後、 「……ベッド、行こ」  椎名にキスをした。  身体を拭くのもそこそこに、俺はベッドに連れ込まれた。あ、ローションとゴムはちゃんとバスルームから引き上げてきたから!  椎名は俺の頭が枕につくかつかないかくらいのタイミングでくちびるを俺のに押しつけてきた。そしてすぐに舌を絡ませてきた。  椎名どんだけ焦ってんだ、って話。 「ん……っ、ん……」  足りない、と言わんばかりに俺の口の中のすべてを奪っていく椎名。舐めて、吸って、噛んで、お互いの唾液を交換するように混ぜあわせて。  くちびるが離れた時、俺だけでなく椎名の息も上がっていた。 「陽向……」  俺の目を見つめた後、椎名はばたりと俺に身体を預け、肩の上に顔を埋めた。 「椎名? 具合でも悪いのか?」  かぶりを振る椎名は震えていた。 「陽向のこと、好きにならなきゃよかったのに、って思うことがある」 「え……どういう……」 「好きにならなきゃ、今、こんなに苦しい想いしてない」  くぐもった声もやっぱり震えていた。 「苦しいのか?」 「すげぇ苦しい……」  震える椎名の背中に手を回し、ゆっくりと撫でる。まだ乾ききっていないそこに、じんわりと汗が滲んでいる。 「そか……じゃあその苦しみ、俺にぶつけていいから」  椎名ががばりと顔を上げる。 「陽向……」 「おまえがどれだけ俺のこと好きか、俺への想いでどれくらい苦しいのか、俺に教えてよ。共有しようぜ。そしたら苦しいのが半分になるかも知れないだろ?」  俺はきっと全部受け止めてみせるから――そう言ってにかっと笑った。 「うぁっ……あぁ……し、な……っ」  俺の身体が大きく揺れた。吐き出した白濁は余すところなく椎名の喉を通過する。  口でイカされたのはこれで何度目か。  よく全部飲んでいられるなぁ……と、頭の片隅で思うも、そんなことは次の愛撫によってすべて追い払われる。  椎名はまだ俺の後孔には一回も触れていない。身体中を舐められ、噛まれ、愛撫されているが、そこだけはまだ何もされていないのだ。  今、椎名は俺のをフェラしながら時折太ももの内側に吸いついて跡を残している。  うっすらと目を開けて見ると、身体の至るところに吸われた跡と噛み跡が残っている。これは……正直気持ち悪い。  だけど受け止めると言ったからには、これも椎名の愛だと思い込むことにした。 「陽向……集中して……まだされ足りない?」  俺が考えごとをしていたのを見ぬいたのか、椎名が俺自身をきつく吸い上げた。 「あぁっ、ちょっ、だ……っ」 「きもちい?」  何度も頷き、椎名の頭をそれ以上動かないよう押さえる。そんなことには動じない椎名は舌を使い続けている。 「あ、やだ……ぁ、ま、た、い……っっ」  言うが早いか、またも達してしまった。もう何度目かは数えるのは放棄した。  息を整えていると、椎名が自分の指にローションをたらたらと落とた。そして片手で俺の脚を押し上げると、濡れた指を後孔につぷりと差し込んだ。 「んぅ……」  何だかもう今日既に何度もしてるような気がしてぐったりしてるけど、俺まだ椎名と繋がってないんだよな。しかもセックスするの今日で二回目。  だから尻に指を入れられるのには最初は違和感しかない……はずだったんだけど。  椎名の指の動きが……何か……やらしい……。  いつの間にか二本に増えた指がバラバラに動いて入口を広げていて、時々痺れるような気持ちよさが走る。 「や……しぃなぁ……何か変……」 「あぁ……ここ?」  椎名がうっすらと笑って俺の中のある部分を押した。 「ふぁっ! な、何……!?」  目の覚めるような刺激が襲う。一気に下腹部に熱が集まる。 「前回もここで気持ちよくなってたけど、覚えてない?」  も、もしかしてここが噂の前立腺か……? 前回はとにかく緊張してたし、気持ちよかったけどあんまり覚えてなかった。 「あっ、だ、め……っ、お、かしく、な……っ」  集中的にそこを擦られて全身がぞわぞわする。 「陽向もおかしくなってよ……俺なんてとっくにおかしくなってるから」  椎名が眉尻を下げて申し訳なさそうに笑い、そして俺を駆り立てるように愛撫を強くする。  その表情に背筋がぞくりとして、快感の後押しをする。
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