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「ああ、俺だ。久しぶりだなタイチだよ」
そう言う彼の背中は、昔よりも更に何かを背負っているように僕には見えた。
「無事なのか、なんていうかその、、いろいろ」
僕の口から最初に出たのは、そんな曖昧な言葉だった。
午前一時過ぎ、通る車も人もいない静かな山道、タイチは柄にもなく弱々しい笑みを浮かべた。
「無事さ、まぁなんてのかいろんなな意味でな、ハハッ」
お前は「一回きり」じゃない。
きっと何度も、何度も。
杏の?いや、僕のためなのか。
「お化け」ってやつにも会ってきたんだろうか。
「寒いぜ、夏は終わった。乗っけてくれよ、久々にお前の車」
「もちろんだ。この季節夜は寒いよな。乗ってくれ、話をしよう。杏は無事だ。お前のおかげで」
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