プロローグ

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プロローグ

 腕の良い写真家は言った。  私が撮った何枚もの写真達よりも、その被写体の少女が心から愛している人物が撮った、たった一枚の写真の方が良かった。その少女が向ける、恋をしたあどけないその目が、その事実を物語っていると。  棚から古びた辞書を手に取った時、一枚の写真がどこかの隙間から落ちてきた。その写真を目にした時、私の頭の中に、何故かこの言葉が響いてきた。  写真は時間を記録する。頭の底から記憶を呼び起こしてくれる。  そして、感情が時間を巻き戻していく。景色。空気。匂い。温度。すでにそれらが、私を包み込んでいた。
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