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店の責任者は、HDDに残る防犯カメラのデータを快く見せてくれた。
ここまで来ると、痛い目にあって反省すればいい。これが坂下の本音だった。声が届かなければ、身を持って体験する事が効果的だ。これは短い経験の中で、感じていた事だった。
慣れた手付きで、時間を検索すると、モニターに一人の男の姿が映し出された。
大量の段ボールを台車で運ぶその姿を確認した時、近野は声を上げた。
「この人」
しかし、それは坂下も同じ気持ちだった。
「こいつって、もしかして?」
「やっぱりあの人ですよね?」
その日からさらに数週間前の事。
この人物は上司と共に、署に被害届を出してきた男だった。会社の備品が無くなっている。盗まれたかもしれないと。そんな内容だった。
名前や社名は、はっきりと分からない。だけどその姿は、はっきりと頭に残っていた。
「すぐに吉田さんに連絡をする」
坂下はすぐに、その場を離れていった。
数日後、男の姿は取り調べ室にあった。近野の勘は。いや、その嗅覚は見事に的中していた。近野が臭ったその男は、会社から盗んだ備品を、この店に持ち込んでいたのだ。
男はそれらを無断で持ち出しては、金に変えていた。動機は、借金をなんとかしたかったからだと言った。
この見事で、スムーズな解決に、坂下は言葉が出てこなかった。
何者なんだ、こいつは。それが本音だった。
誰かが聞けば、偶然だと言うかもしれない。しかしそこには、それらを感じさせない独特の雰囲気があった。それを坂下は、忘れる事ができずにいたのだ。
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