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アハハ。
やっぱり、そうだよね。そうでしかない。
でも、でも、でも、やっとお話ができる。
へたり込んだあたしは、彼女を見上げる。
ごめんね。ごめん。
声にならない声でただ必死に謝り続ける。
今更、謝ったって許してもらえないのは分かってる。分かってるけど、それでも謝るしかない。許してもらえなくてもいい。ずっと憎まれ続けてもいい。それでもあたしはバケモノと言われる気持ちが分かったの。痛いほどに分かったの。本当に……、
本当にごめんなさい。
あたしは彼女にすがりつき泣きはらした。
ふっと、
泣き続けているあたしの頭を撫でる彼女。
優しく包み込むようにも温かく。
あたしは驚いて目を見開いて彼女を見る。
穏やかに笑む彼女。
「バケモノって言われて悲しかったよね。辛かったよね。苦しかったよね。孤独で寂しかったよね。一人で悩まなくていいよ。あなたの気持ちが痛いほど分かるから」
彼女の目にもまた涙がうっすらと浮かぶ。
あたしは……、あたしはなんて馬鹿だったんだ。今、はっきりとそれが分かった。
「バケモノって言ったのは、あたしの方よ。あたしがあなたに……」
申し訳なくなってしまいうつむくあたし。
「それ以上は聞かない。聞く必要もない。私はずっと貴方をみていた。だから分かる。貴方の今の気持が。死なないで。泣いてもいいの。思いっきり泣いて欲しいの」
と言われてしまいあたしは言葉を失った。
彼女は全てを分かって受け入れてくれた、バケモノの心を持っていたあたしをだ。
言葉の代わりに嗚咽と涙で答えるしかできなかった。
いつまでも、いつまでも彼女の優しさに甘えて、あたしの気持ちを吐露し続けた。
そして長い時間、言葉の無い会話した後、あたしは落ち着いた。落ち着いたあたしを見た彼女は、また微笑んで手をつないでくれた。その手は温かく心が安らいだ。自然と頬が緩む。そうして彼女が顔を覗き込んで悪戯っぽく笑って言った。
「じゃ、帰ろっかッ」
と白い歯を見せて。
その言葉が早いか、原色が歪み揺れるトンネルのサイケデリックさが加速して目の前がチカチカと眩んで思わず目を閉じる。次に目を開けた時、あの日に戻っていた。授業中に暇で、あの子の背中に消しゴムのカスを投げつけていた、あの日にだ。
あたしの右手には消しゴムのカスが在る。
バツが悪くなり、ぼりぼり後ろ頭をかく。
手の中にあった消しゴムのカスを捨てる。
そうだ。
授業が終わったら異世界転生の本を貸してもらおう。
そして異世界転生について教えてもらおう。また異世界転生した時に、あんな事にならないように。ふふふ。彼女だったら喜んで教えてくれる。いやいや、それよりも彼女とお話したいんだ。沢山、沢山、お話したい。そして仲良くなりたい。
そしたら、バケモノなんて思わなくなる。
そして、
バケモノなんて言葉がなくなればいいな。
この世から消え失せればいいなと思った。
そして、その一歩を踏み出す決意をした。
退屈な授業の終わりを知らせるチャイムが、高らかに鳴り響いた。
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