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「いったいどこへ行くんですか?」
さやかの後ろを歩きながら俺が声をかけても、彼女は無言で足を進めるだけだ。
さやかは俺の学校近くの公園に入り、あちらこちらで楽しそうにおしゃべりしてる子供連れやお年寄りたちがいる場所を横切って歩いて行く。
この公園は奥へ行くとまだ整備されていない荒れ地があり、木々が鬱蒼と茂っているだけだ。
ひと気はまったくないので、いつも伊央利には行くなと注意されている場所である。
そんなに人に聞かれたくない話をするつもりなのだろうか。
確かに伊央利のことで宣戦布告をされたら、俺も平常心ではいられないから、修羅場になるかもしれないけど。
それにしても周りの風景が寂寞としたものになって来るに連れ、俺は情けないことに心細くなってくる。
せめて伊央利にラインかメールを送りたかったが、それだと彼は必ずここへやって来る。
どうしても伊央利とさやかは会わせたくない。
そんな思いを抱いたことを俺はこのあとすごく後悔することになるのだが。
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