Sの気の兄

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Sの気の兄

 いつも早寝の大和はもう目をとろんとさせていて、眠そうだ。 「じゃ、伊央利、俺、部屋へ帰るね」  あくび交じりの声で大和がそう言い、腰かけていた伊央利のベッドから立ち上がろうとしたとき、手をつかまれて引き戻された。 「な、何? 伊央利っ……?」 「大和……、もう帰っちゃうの?」  いつもの伊央利らしからぬ、捨てられた子犬みたいな目で甘えて来るが、その手はしっかり大和のパジャマの裾から中へと入りこんで来ている。 「伊央利っ……あっ……何、するの? 下で父さんと母さんが……」  両親は二人とも宵っ張りだ。まだ階下で起きている気配もする。  なのに、伊央利の手はどんどん大和の敏感な場所を暴いて行き、形のいい唇は抵抗の言葉を遮るように大和のそれに重なる。 「ん……ん……っ……」  伊央利の熱い舌が口内を這いまわり、長い指で乳首を弄られる。  長いキスのあと、煌めく糸を引きながら離れて行く伊央利の唇をぼんやりと見つめるときには、既に大和の体は快楽の虜になっていた。 「ああっ……伊央利っ……」  深く挿入され、ひと際高い声が漏れたとき、大和の小さな唇は伊央利の綺麗で大きな手によって塞がれた。 「だめ。大和……声、下に聞こえちゃうよ……?」 「……っ……」  それならこんなやらしいことしなければいいのに……そんな思いは大和の心の奥底でちらりと浮かんだだけで消えてしまう。  今は伊央利が与えてくれる気持ちよさに溺れ、彼の広い背中に縋りつくだけだ。  父さんと母さんがまだ階下で起きてる……。  そんな超最大級なリスクも、今、この瞬間はお互いを求める気持ちを高める材料にしかならなくて。 「……っ……っ……んっ……」  必死に声を抑える大和と、 「大和……可愛い……大和……」  そんな弟の姿に煽られるかのように掠れた声で名前を呼ぶ伊央利。  部屋には大和の押し殺した喘ぎ声と、伊央利の荒い息遣い、そしてベッドの軋む音が響いていた。  階下までその音が聞こえているとは思えないが、もし聞こえていて不審に思った両親のどちらかが部屋のドアを開けたりしたら、何の言い訳もできない。  それでも求め合う気持ちはとめられないで、二人は深く交っていた。  大和はもう何度もイッているのに、伊央利はまだ一度も達しておらず、弟の中で硬度を保ったままだ。  その硬い雄で、嫌というほどいいところを突かれて、大和はもう息も絶え絶えになっているのに伊央利は腰を進めることをやめない。  そんな伊央利に、大和はぼんやりと霞む頭で思った。  ……伊央利って、もしかしてSの気、ある? 「ぁっ……」  最奥を思い切り突き上げられて、あまりの気持ちよさに意識が遠ざかりそうになっては、また入口ギリギリまで雄を抜かれて、現実に戻される。 被虐の快感は甘く大和を酔わせる。 「もうダメ……ダメ……伊央利……伊央っ……」  懸命に抑えた声で、もうこれ以上は無理と限界を訴えた次の瞬間、伊央利は大和の肩を甘噛みしながら、奥深くで熱を迸らせ、大和は何も吐き出すことなくオーガズムを迎えた。  
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