一話 好きだからこそ“別れよう“

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一話 好きだからこそ“別れよう“

『 ぁあッ!ンッ! 』 「 はぁー……っ…… 」 吐息の混じる女の喘ぎ声と密かな男の乱れた呼吸 ベッドのスプリング音が彼等が動くと共に音を立て、真っ白なシーツに沈む身体は汗と欲に濡れる 男は柔らかくシルクの様な長い黒髪へと指を滑らせ、首筋に付く髪を取るように動かせば、肩へと手を移動させ身体を下げ、深く奥へと熱い陰茎を埋めた 『 あ、うっ!んんっ…… 』 グッと肉壁を擦り上げ、膀胱や子宮へとまるで欲を掻き立てる様に刺激する腰の動きに、彼女の顔は真っ赤に染まり、中をきつく締め付ける 「 くっ…… 」 陰茎の締め付けた感覚に男は小さく呼吸を止めたような声を漏らし、内部の感覚と反して腰を下げ、もう一度腰を揺らし押し込み、 それを数回大きく繰り返せば、彼女の身体は欲を拾い集め、其に答えるよう蜜は溢れ出る 『 あぁっ、はっ……んっ、ぁ! 』 「 ハァー……ふっ、ん…… 」 滑り気の良くなる繋ぎ目部分から垂れる、蜜と共に肉体がぶつかる音は響き、鼓膜までも犯していく 目を閉じていた男はその髪色と同じ金色の睫毛を震わせ目蓋を開け、何処までも透き通った青色の瞳を向け、僅かな笑みと共に口付けを落とそうとすれば、彼女は避けるように横を向く 「 ……ンッ、キス……いや?先に舐めたから? 」 『 はぁっ、ん、いや…… 』 「 そっか、わかったよ 」 耳元で囁く低くも高くもない、甘さを含む声で囁けば、嫌がる事すら愛しげに見詰め、 耳朶へと舌を滑らせた軽く御揃いのピアスへと口付け、首筋へと顔を寄せる 彼女は何処かその様子を他人事のように見たあとに、金色の髪に触れ指先で滑らせ撫でるように汗ばんだ後頭部をなぞり 気持ちいいのか男の腰は揺れ、更に激しさを増す 『 ぁあっ!っ、そんな……んっ…… 』 「 ハァッ、相変わらず……激しい方が好きだよね…… 」 『 ぁあ、っ、くっ!! 』 絶頂を高めるには十分な程に激しく動く彼によって、掻き上げられる快楽は直ぐそこまで迫り 其に合わせるよう動く身体を押さえるよう背中へと抱き締め、物足りなさもある小振りな胸元へと顔を埋め男の表情は悩ましげなものになる 「 はぁ、いきそ……っ……もう、んッ……! 」 『 あぁあっ、だめっ、いや……い、くっ~~! 』 跳ねた身体は腰を反らせ、頭の中が真っ白になる感覚に彼女の意識は朦朧とし全身が痙攣とした様に震え、男もまた防ぐものすら着けてない為に内部へと精子を吐き出した 先に動き出したのは男であり、彼は脱力感と共に感じる幸福感に口角を上げ、顔を寄せれば額へと口付けを落とす 彼女が落ち着くまで、動くことをしない男は様子を見て抜き去り サイドテーブルへと手を伸ばし箱を掴み、テッシュを何枚か取れば自身の陰茎を拭き、仰向けで動くこと無く呼吸を整える彼女を見ては ゴミ箱に捨てること無く丸めたテッシュを放置し、片足で自分側にある脚を開かせ、閉じないよう固定しては同じ方の手を股へと滑らせる 『 ぁ!だめっ……いま、触らないで…… 』 「 んー?嫌じゃないでしょ 」 『 もぅ、あっ……! 』 触れた事で静電気が走るように跳ねた彼女は、男の方を向き否定したように眉を寄せるも、わかってたかの様に額へと口付けをし、髪へと鼻先を当て男は、濡れている秘部へと指を埋め ぬるっとした体液を感じるよう指先で擦り合わせれば中へと埋めること無く、割れ目を開き外にあるクリに触れる 『 あぁ、あっ……んっ、あっ……! 』 休憩が完全に終わってないまま、クリへの刺激に彼女は声を上げ何度も身体を震わせ逃げるように動く脚を、男は踏みつけ止めたまま指先で器用に擦っては反応に気付き中に指をいれ、手前側で指を曲げ激しく動かす 『 うぅ!!だめっ……だめっ、いぁ、やっ、ぁあっ!! 』 迫る感覚は絶頂とは違ったもので、彼女はシーツを握り締め、爪先まで力が入れば男が指を引き抜くと同時に透明な液体は勢いよく吐き出し、ベッドを濡らす 「 ふっ……気持ちいい? 」 『 やだぁ、もっ、うっ!やあっ!!ぁっ!! 』 生理的な涙を浮かべた彼女に、気にもせずまた同じ事を繰り返せば二度目は早く先程と同じ様な量の潮吹きをすれば男は中に埋めていた手を抜き、脚を持ち上げ開けば、身体を横向きにさせたまま陰茎を埋める 「 ほら……もっとしよ? 」 『 っ~~!! 』 濡れた部分へと埋まった陰茎は、早々に揺れ動き男の手は優しく子宮がある腹下へと触り指先でトントンと叩いたり、撫でれば彼女の性欲は掻き立てられる 一度重ねれば長い行為、それは二人が滅多に会わない関係だからでもある 夜のラブホテルの一室に響く女の甘い声は、明け方近くまで何度も聞こえていく 「 それを、飲むの……? 」 朝日と共に、男は眠りに付くこと無く彼女の後から御風呂へと入り、シャワーを浴び出てくれば 鞄から取り出した物を口へと入れる、様子に眉を下げた 錠剤をペットボトルの水と共に流し込んだ彼女は、黒いサポート付きのタンクトップに下着である黒のレースパンツを履いた程度 細身のスラッとした長い脚に白い色白の肌は所々、赤いキスマークで色付き、腰ほどある髪を右の方に纏め一結びになっている 『 貴方が、ゴム着けてくれないから……飲むしかない 』 「 …俺の精子がダメなんじゃなくて、君が出来たくないわけね 」 『 結婚してないし 』 「 そうだけど、するつもりだし、そう言う話でしょ? 」 男はパンツとジーパンを履いた程度で、ワインレッド色のソファーへと腰を下ろし、彼女の横へと行けばその黒い瞳へと視線をやる 「 俺と結婚するの嫌なの? 」 『 その事で、話があったんだ。だから今日、呼んだ 』 「 なに? 」 十二時間前に、彼女の方から男をメールにて呼んでいた 話したいことが有るからと告げ、男は久々に会えることを喜び一時間半、車を走らせ女の元へと向かった 県が隣同士で有りながらも付き合っていたのは、高校二年生から、既に御互いに二十三歳を過ぎた頃に中距離恋愛を歯止めをつけるべく、結婚を視野に考えていた だからこそゴムを着けること無く行為をし、身体を求めていたのだが彼女は"自身の事"で一つ気にかかり、その一歩を踏み出した ソファーから立ち上がり、男が畳んでいた服を掴み着替えていく 軽装だった為にパーカーに短パン程度を早々に履き、髪を取り出し答えた 『 ねぇ、別れよ。もう…関係を止てほしい 』 「 …えっ?どういうこと……?関係止めるって 」 『 そのままの意味、都合の良いときだけ呼んでセックスなんて止めよう 』 キャスケット帽を被り、短い踝迄の靴下を履き鞄を持つ彼女に、男の思考はパニックになり立ち上がる 「 都合って、そんなつもりじゃない!それに結婚したら一緒に住めるし、デートだって行けばいいじゃん。セフレだったみたいな言い方、止めて…… 」 『 違うの?実際そうじゃん……。初めて付き合ったときも初日のデートは家でセックス……いや、その時はもうどうでもいいんだけど、行ったなんてボーリングとかカラオケ。まともとに恋人らしいことなんてしてないのに、結婚?笑わせないで 』 「 俺はそんなつもりなかった!時間が合えば他にもレストランとか水族館も考えていた…… 」 淡々と告げる彼女に比べ、焦りを見せる男は服を掴むこと無く近付けば膝を付き、涙を浮かべる 『 時間?そんなの、他の子に上げたら。私はもう身体だけの関係は止めたい。ホテル代、半分位は置いといたから後好きに帰ってね。タクシー拾うからいいよ 』 「 イヤだ……待って、待ってお願い、いかないで……俺は、君がいないと、生きていけないの…… 」 『 楽しかったよ、バイバイ……アラン 』 「 瑠依(ルイ)!! 」 パタリと閉まった扉と共に、男が名を呼ぶ声が響き 彼女は帽子の鍔を深くし、唇を噛み締め外へと走っていく ラブホテルから離れ、大通りに出た彼女は履き慣れた踵の有る白いサンダルを鳴らし、早歩きで歩いていれば走ってきた男の声に目を見開く 「 瑠依!待って、もう一度話し合おう!! 」 『 五月蝿い、来ないで……! 』 ホテルに車を放置したのだろう、服を着ていても乱れてるその姿は急いで着たと分かる程で 声を張った彼女は振り返り涙を流し精一杯の笑顔を向けた 「 !! 」 『 もう私は……ヤキモチを妬くのが嫌なの。だから、苦しくなりたくない……。貴方を自由にさせたいの 』 「 そんな、俺は…… 」 『 だから……"別れましょう" 』 横断歩道を渡ろうと歩き出した彼女に、男は視界に入った車に気付き咄嗟に走り出すも下を向いていた彼女にはそれが気付くことが出来なかった ブレーキの掛かる音すら無いまま、物がぶつかる音と共に、彼女の身体は宙へと浮き、地面へと叩き付けられた そして車もまた電柱を折るほどに壊し、車のフロントガラスは赤く染まった 運転手を気にする暇もなく、人々の叫びと共に男は震える脚を動かし女へと近付いた 「 そんな……ル……! 」 反対車線走る車は事故に気付いてないようで、急ブレーキを踏むのが遅れ、男の身体は反対側へと飛び、強く打ち付けた頭と共に血は流れ始め 数台の車は其々にぶつかったり避けたりをし辺りは騒然となった 一人の運転手は余所見運転にて電柱にぶつかり車は破損し即死、 二人の男女が車に轢かれ死亡し 反対の男を轢いた運転手は意識不明の重症 玉突き事故に巻き込まれた運転手は其々軽症だと、その日の夕方にはニュースに取り上げられた 誰が望んだか、誰も望んではない悲劇の事故だった 全ての原因となった余所見運転をしていた男はもう、この世に居ないのだから誰も攻めることは出来ない 若い女の腹には幼い命があったことも、知るのはニュースを見た物達だけだ " また飲んでるの? " " うん……栄養付けるためのビタミン剤 " " 俺の精子が不能なのかな…… " " ふふっ、そんな事ないよ " 彼女は一度も経口避妊薬である"ピル"を飲んだことはなかった 子供が出来なかった理由は "別れること"を何処か知ってたのかも知れないし只運だっただけかもしれない
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