二十八話 ボクの役割

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二十八話 ボクの役割

~ ルビー 視点 ~ ボクはルビー 今日は、ボクの一日を紹介するよ! えっ、なに…興味ない?そう言わず、ねっ! これでも現女王蜂である、ルイにとっては一番最初の子供だから、ちょっと他の働き蜂と違うんだよ 「 ルビー!そっちに行ったよ!! 」 「 任せて~! 」 朝一番は、起きて毛並みを整えてからは早々に朝御飯である、ご飯を狩りに出る これは母さんと生まれたばかりのパールの為にあげる獲物だから、ちょっと小さくても大丈夫 魔界の殆どの食糧は動物性たんぱく質が豊富な虫であり、どんな種類でも肉団子に出来ればなんでもいい 最近、よく相手してくれるアランと共に朝御飯である、素早いトンボへと追い掛けていく ボクの羽って構造上は大型の猛禽類だから速度はMAX百三十kmぐらい その点、トンボはMAX百kmだけどすばしっこくて急に方向を変えるから大変なんだよね やれやれ、目についたから選らんだけどやっぱり夏だしセミの方が捕まえやすいよ 「 ギギギッ!! 」 「 ふぅ…… 」 嘴で噛み付きそのまま地面へと降りれば、飛んでくるアランは前へと立った 「 もう狩りは一人前だね~。さっすが~」 「 そう?へへっ 」 褒められるのは嬉しくて、片足で踏みつけてはその場で解体して羽の先に付いた爪を器用に使って、嘴で砕きながら唾液と共に丸めていく 「 うん、速い虫でさえ捕まえるなんて、俺でも魔法使うから直接は凄いよ 」 「 其が働き蜂だからね!雄は狩りが下手だし 」 「 ははっ。らしいね~。否定しない 」 一度全てを丸めて肉団子を作れば、縦の長さは無くなった両手に持てるほど丸くなった程度のこれを 持ち、今度は歩いて帰る 長い尻尾を地面に引き取りながら歩けば、アランもまた着いてくる 肉団子が持ち運べるように背中に羽があればよかったのに~なんて思うこともあるけど、まぁ、歩いて帰れる範囲に行くから問題はないね 幾分か歩いて城に戻れば、直ぐに肉団子を調理場へと持っていく アランとは途中で離れて、肉団子を保存場に置きハクに言われたぐらいの小さな肉団子を作り、家来であり弟のパールの元に行くんだよ 「 パール~!ご飯だよ~ 」 「 ヒヨヒヨ!! 」 子育て用の部屋は涼しい程で一定の室温に保たれてる場所で、此処には母さんの子がずらっと並ぶ予定だけど、全然スペース空いてるよね… 嬉しそうに腰に付いた飾り羽を広げて、顔を上げるちっちゃなパールの口元に肉団子を向ければ、食べていくのが可愛い 「 ふふんっ、そんな焦って食べなくても沢山あるよ。可愛いね、パールはボクの家来になるんだよ! 」 「 ヒヨ? 」 「 うん、だからちゃんと言うこと聞くんだよ。危ない事はしない。母さん以外は信じちゃダメとか…色々 」 ご飯を食べさせてるときには、働き蜂としての極意を話しながら、肉団子の欠片が残ればそれは自分で食べてパールをしっかり毛繕いしてから、今度は母さんの元に行く 母さんは、起きる時間がいつも違って、まちまちだからまずは探して、御飯にするか聞く必要がある いらないって言われたらさっきのは昼御飯になるからね 「 あ、母さん!母さん!! 」 丁度、風呂場から出てきた母さんを見掛ければ嬉しくなって羽を広げて駆け寄れば 此方を見上げて微笑む優しげな表情が大好きですり寄る 『 おはよう、ルビー。アランから聞いたぞ、大きなトンボを仕留めたらしいな? 』 「 そう!でも、あのぐらいなら小さいよ? 」 『 ふふっ、御前にはそう思えるだろうな 』 いつの間にか母さんの身長を抜かして、大きくなったこの身体だけど、優しく口先やら首元に触れる手に嬉しくて顔を下げてすり寄れば優しく抱き締めてくれる 父さんが言ってた、母さんは今までの女王蜂とは違ってよく触れるし優しいと… 俺にとって始めましては母さんだから、この優しさ以外は分からないけどね 「 へへっ、あ!食べる?トンボは美味しいよ~ 」 『 ……嗚呼、そうだな。貰おうかな… 』 「 うん!!セミも美味しいけどね! 」 セミは脂っこくてバターピーナッツみたいだと、母さんは言ってたけど、バターピーナッツを食べたことないから何か分からないんだよね まぁ、トンボも醤油せんべいみたい、とか例えられても分からないけど… 女王蜂の使う食卓に来れば、母さんはいつのもの場所に座って、料理を待つ 肉団子を別の見た目に変えるのは苦手な為に、その時はハクにやってもらうんだ 「 では、これを持っていってあげてください 」 「 はーい! 」 見たことない料理、あの肉団子が魔法で別のになるなんて面白いよね それも、ワンプレート中には白いパンで挟まれたのが並び葉っぱみたいなのもある 「 母さん、どうぞ! 」 『 ありがとう。今日はサンドイッチか…いただきます 』 肉団子の方が美味しそうだけど、まぁ、見た目が違うだけで同じものなんだよね 食べる様子を見ていれば手で掴み一口含んだ母さんは、笑みを浮かべ頷いた 『 うん、やっぱりルビーが作ったのが一番美味しい 』 「 やった!いっぱいあるから食べてね! 」 『 なら食べさせて貰おうかな 』 普段は余り食べなくて少食で、肉団子は余ったらボクが食べて処分してるけど、今日は新しく捕りにいけそうなぐらいには食べてくれるみたい ハクも何処か安心した表情を向けては、朝御飯を追加で見た目を変えたのを受け取り全て食べて貰った 『 んー、何しようかな…… 』 「 弟、増やすのは? 」 『 卵も、もう少し後だろうな…。そう焦るな、一気に増えたら大変だろ? 』 「 そんな事ないよ!大きいの仕留めるだけだからさ 」 『 そうか、ルビーは頼もしいな 』 弟が沢山増えて、ルビーって呼ばれて慕われるのが楽しみで仕方無い 母さんにはその為に沢山、栄養のあるものを食べさせたくてまた頑張って捕りに行こって考えては、玉座に行く、母さんの横へと立つ 『 はぁ…だから、その話しはサタンをしてくれ。貿易なんて知るわけない 』 「 サタン様がレーヌアベイユに聞いてくれと言ってきたのです。我が国と貿易を通せば… 」 『 つーか…この魔界に貿易とかあった事すら初耳なんだけど 』 「 ルイ様、人間界のように町は御座いますよ。貿易があるからこそ、衣服やら宝石なども御座います 」 小難しい話しは分からないからその点はハクに任せる ボクは眠くなるのを必死で堪えては、いつでも威嚇出来る準備をしてるだけ 『 …俺はこの城から離れないし、金貨やら宝石が好きなわけでもない。経済とかはサタンに任せてくれ。はい、終了 』 「 待ってくれ、レーヌアベイユ!まだ話しは… 」 「 ………… 」 母さんがピンチ!そんな時は口を出す前に威嚇するのを覚えた 無言のまま大きな羽を広げれば、彼は頭を下げてから背を向け立ち去った 『 はぁ、塩を撒いとけ……塩を 』 「 どんな効果があるんですか? 」 『 まじないみたいなのだ 』 「 我々は魔物ですよ? 」 『 …………深くは気にしたら駄目だ。気分の問題ってやつでな 』 ハクの御腹には二人目がいて、パールと同じく家来が増えるのが楽しみ! あの御腹の中には、ボクの弟が……と思いながら見ていれば母さんは立ち上がり玉座を降りる 『 ルビー、休憩しよう 』 「 うん!するするっ 」 餌を捕まえたり時間事にパールにご飯を与える以外は、母さんの傍にいることが多く 休憩する場所は決まって、中庭にある花壇やらあって大きな木の影 最初にうずくまるように、しゃがんで身を縮めれば、母さんは身体へと凭れる 『 やっぱり此処は気持ちいいな……少し寝る 』 「 うん!ボクも…… 」 「 ヒヨッ! 」 此処に来るときに母さんが連れてきたパールは、母さんの御腹の上 少し前までその場所はボクの特等席だったけど、今の身を委ねてくれる感じもいい 目を閉じて眠ろうとすれば、母さんは毛並みに触れ呟く 『 ……御前も人の姿になれるようになれば、動きやすそうだな 』 人の姿……父さんやお母さんみたいな姿なんだろうけど、今の身体に不満は無いから別にいい 其よりも母さんの役に立てる大きくて強い身体なら、問題ないよ 「 ボクは……このままで、いいよ…… 」 『 そうか……おやすみ、ルビー 』 「 うん、おやすみ…… 」 夏の蒸し暑さとは違って、中庭に突き抜ける風によって涼しくて心地がいい 昼前の二度寝は好きだからこそ、この時間は邪魔されたくないね 一緒に眠り、一時間ほどの仮眠をすればボクを起こしてきたのは父さんだった 「 ん……? 」 「 ルビー。母さんをベッドに連れていく。御前は仕事に戻れ 」 既に母さんを横抱きにしている父さんに、休憩時間は終わりなんだと、思いながら軽く背伸びをしてぐっと身体を伸ばしては頷く 「 分かった!仕事にもどるね! 」 「 嗚呼、頑張れよ 」 「 うん!父さんは、母さんをお願いねー 」 任せると頷いた彼に笑顔を向けては、尾を引きずって城の中へと戻る ふっと、振り返れば母さんを横抱きにした父さんは笑みを浮かべ額へと口付けを落としていた 本当、大好きなんだなー!って改めて思う 仲いい二人を見てると幸せだね! 肉団子をパールにあげたりして、昼御飯を食べに来なかった母さんの変わりに肉団子を食べて、 午後からはハクさんに頼まれてる事をする 「 一番最初に生まれた貴方しか分かりません。今日は新たに十三個生まれてます……どうぞ 」 「 任せて! 」 母さんの為に増産型の魔物達が生んだ卵 それは一旦、此所の保管部屋に集められて俺と同じく最初に生まれたハクで管理する “寄生蜂“が卵の中に入ってないか確認する為に一つ一つ、触れては音を聞いたり、匂ったりする 寄生蜂というのは卵に植え付ける食用の昆虫でも虫でも、魔物でもない生き物で、その姿は蜂なのに蛾みたい そして厄介なのが、卵に穴を開けて寄生蜂の卵を植え付けて中で赤ちゃんを食って成長して 卵を割って出てくる……もし出てくればその見た目は“増産型の魔物“と変わらないらしい 寄生蜂に感染した魔物が出てきて、母さんと交尾でもしたら、母さんの胎内に寄生蜂が入ってしまう もし入ったのが気付かなかったら、母さんはそのまま寄生蜂の女王となって、雄達に植え付けてしまう 女王蜂とその周りにいる雄を取り込むには、まずは弱い増産型の魔物から…… そう教わってるボクは、ハクさんも寄生蜂の卵が分かるのに敢えてやらせてくれる 「 これとこれ……嫌な匂いがする 」 「 …流石ですね、正解ですよ。割って確認を 」 「 うん! 」 寄生蜂の卵から壊す必要がある もう乱暴に床へと落とせば、卵を脚に当て踏みつけてはぐしゃっと割る ハクがパールの卵を守ったのがそう、寄生蜂に卵に穴なんて空けられたくないからね 「 ……うげっ 」 卵を割れば、中から出てくる白くてヌメヌメした寄生蜂の幼虫に鳥肌を立て、口で頭を噛みきっては生まれるはずだった子と共に肉団子にする これはなんやかんやでご飯になるからいい 「 今日は二つ……もしかしたら、寄生蜂がもう居るのかも知れませんね。そうなると厄介ですね…… 」 魔物の姿になってる寄生蜂、ほんの僅かな匂いで分かるけど、この城には沢山の魔物が生活してる その中で見付けるのは至難の技だってさ 「 ボク、頑張るよ! 匂いは覚えてるから! 」 「 えぇ、貴方は優秀なので頼みますね。此ばかりは最初に生まれた働き蜂しか出来ないこと……巣を守るために与えられた使命です 」 「 うん! 」 母さんには内緒のボク達の仕事 子供が卵を潰してるなんて知ったらきっと悲しむから、教えられない それに、家族のための使命ならボクは喜んでするよ 例え、昨日まで仲良くしていた魔物だとしても、殺せるから 「 ルイ様にはこちらの衣なんてどうでしょうか? 」 「 きれいで、とても似合いそうですね! 」 母さんによく服を届ける人 その片割れにいた魔物の匂いに気づけば、背後から近づく 「 ねぇ、君さー 」 「 これはルビーさま、なんで……っ!! 」 長い尻尾は、只の尻尾じゃない 自在に変形が出来て、鋭い剣に変えれば振り返ると同時に腹下へと突き刺して、身を貫く 母さんに渡す布が真っ赤に染まって、隣にいた使用人へと軽く笑っては、血を吐く寄生蜂の頭を食らう 「 ……ボクは騙されないよ 」 「 っ……!! 」 寄生蜂が母さんの周りをウロウロしてたなんて駄目だね 少し注意しなきゃ 今の母さんは発情期に入ってるから、間違って寄生蜂と交尾したら寄生蜂が増えていくから元から潰さなきゃね 尻尾を引き抜き、血を振るって弾けば肉団子に作る 「 そうそう、君はこの魔物と交尾した? 」 「 い、いえ……してません…… 」 「 そう、じゃ……いいや。その言葉、信じるからね 」 何度も頷く魔物へと顔を寄せて、怖がる様子を横目で見れば匂いを嗅ぎ違和感がなければ肉団子を持って離れていく 『 ……今日の飯は、一段と美味いな 』 「 でしょ!捕るのは苦戦しないんだけど、たまにしかいないからねー 」 寄生蜂、厄介だけど美味しいから居てくれたら母さんは喜ぶ だって、妊婦の寄生蜂なんて栄養満点だからね 『 そうか……美味しい 』 「 へへっ、良かった 」 生まれながらに仲間だった者達を殺していくのが、役目であるボクは、どんな屍を踏んでいても 母さんの前では笑って過ごす、一匹の働き蜂でしかない それはハクも同じ、だけど知ってるのは雄の一部だけ 「 ルビー、余り無理するなよ 」 「 んー?してないよ。狩りに行くより簡単だからね 」 「 ……そうか、ならいいんだが 」 最初に生まれた子の役割を知ってる父さんは、気遣ってくれるけど大丈夫 だって、狩りの方が持って帰るまで歩くの大変だからボクは気にしないよ さて、夜まで寄生蜂を探してウロウロしよ! パールや、次の弟達にはないボクの能力 それは味方と敵を瞬時に掻き分けれる、 誰よりも優れた聴覚と暗殺 だから母さんには直ぐに“初めての子“が必要だった 寄生蜂から守るための“ボク“がね
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