三十話 醜い孔雀

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三十話 醜い孔雀

「 アイツを拾ったのはこの俺さ! 」 『 だからなんだ? 』 只今、騒がしい訪問者が訪れている 何事かとばかりに集まって来るサタンの下僕である魔物達をよそに、玉座に座る俺の前には、此処に来たばかりの頃に追い払った雄が来ていた 名をロッサ 魔王クラスであり、前に向かって反り立つ立派な角や、長いロングの赤髪は靡くように一纏めにされ、蜂蜜色の瞳を持ち顔の半分にはトライベル柄の刺青があり、蛇のような赤い尻尾 身体全体にある模様はすべてトライバルの刺青を彫っている この派手な見た目を忘れるわけもなく、そしてアランを部下にした奴でもある 「 だから、この俺の部下だったんだ。この俺のな 」 『 ほぅ?つまり御前は、自分が有能だからアイツも有能だっただろう?とでも言いたいのか 』 「 そうだ! 」 よく自慢気に出来るのか不思議でならない 騒ぎというわけではないが、ややこしい人が来たってことで玉座の間には、アラン、ハク、ネイビーがこの光景を眺めていた 俺の隣に立つ、いつでも威嚇出来る準備をしてるルビーに待てという視線を向けながら、ロッサを見下げる 『 図々しいにも程がある。御前とアイツでは天と地の差があるように見えるが…… 』 「 なっ、俺を知る事もなくそう言うのか。ブラオンだって、元は俺の部下だ 」 確かに、見た目と口調だけで判断してコイツを知ろうとはしてない それに、ブラオンとも面識があった事に疑問を持ち視線を横にある入り口へと向ければ、立っていた彼は密かに頷いた やれやれ、そりゃ部下ばかり相手にされていれば上司はヤキモチを妬いて怒るだろう こういう場合は上司を引き立てるのが部下の仕事だが、彼等は魔物 自分さえ良ければいい、という考えが働くために簡単に上司であったロッサを裏切ることが出来る 案の定、彼等の視線はロッサと目を合わさないようにどこか明日の方を見ていた 「 このロッサ・ピーコック。どの魔物より美しい故に、女王蜂(レーヌアベイユ)を満足させれるだろう 」 『 ……ナルシスト 』 「 ぐはっ……なっ、ナルシストではない! 」 ピーコック……孔雀の雄と言う意味らしいが、彼が孔雀と呼ばれてる理由がやっと分かった 名前がそうなんだろうが、見た目からして“孔雀“には見えないのだが… 『 ナルシストだろ。大体…孔雀を名乗るわりには、なんだ?その爬虫類のような尻尾。孔雀ならば大きな尾を持っていても…… 』 「 っ!! 」 「「( 踏んだな…… )」」 まるで地雷をタップダンスの如く踏んだ俺に、周りで見ていた彼等は視線を下げた 嗚呼、“見た目“で判断してしまったことに申し訳なく思い、わざと偉いような雰囲気をしてたのを止めたくなり、謝ろうと口を開けば顔を赤く染めた彼は此方を睨んだ 「 俺が“醜い孔雀“だから気に入らなかったの、ですか。確かに、孔雀のような尾は持ち合わせていませんが、雄として……女王蜂の役に立てれば、と思ったが……この俺を侮辱するなど…… 」 戦争だ!!とか言うのだろうか ネイビー達が剣へと手をかけた事に気付き、嫌な予感に冷や汗をかけば彼は声を張った 「 初めて過ぎて戸惑うだろうが!! 」 『 ん?? 』 「「 えっ…… 」」 寧ろ侮辱されたことないのかよ! そっちの方が驚いて、此処にいる全員が身体を崩すような勢いだったぞ 『 どう、尻尾が……嫌なんじゃ 』 「 何故だ?この美しい俺の尻尾だぞ。孔雀のように花を引き潰す尾ではなく、器用に物を掴める便利な尻尾だ 」 『 便利とか言うんだな…… 』 流石蛇の尻尾、締め付ける為に器用に回して絡めることが可能で、彼は見せ付けるように揺らして腰に差していた剣を尻尾で抜けば、剣を動かして見せる 「 尚更、女王蜂が気に入った。この俺が交尾してやると言って来てるんだ。どうだ? 」 『 そのポジティブに負けたよ……。一度だけだからな…… 』 「 それならば、交尾を承諾するのか!? 」 大勢がいる前で言わないといけないのか 誘ったりするのはなれたが、此処まで知られると恥ずかしさだってある 期待の眼差しを向けるロッサとは違って、彼等の驚くような視線が突き刺さる 『 嗚呼、やってやるから……孕んで、産んで、国に帰ってくれ…… 』 「 流石、レーヌアベイユ!俺の美しさに惚れたな?そう心配しなくとも、俺は初めてだ!この美しい身を全て捧げよう 」 『 童貞捧げられても、なんか嬉しくないんだが 』 「 どうてーとは? 」 自慢気に童貞と言ってウケるのはアランぐらいだぞ、 見ろ……腹を抱えて震えて必死に笑いを堪えてる様を…… それに比べて、ネイビーは剣を抜く寸前だしそれを止めるハクが焦ってたり、ブラオンは固まってる そして、ルビーはロッサの言葉を真似て問いかけてきた 「 母さん、どーてーってなに? 」 『 ……知らなくていい。ロッサといったな 』 剣を鞘へと戻した彼へと、告げる 『 ……俺の子を孕め。明日、繁殖場にて会おう 』 「 !!……このロッサ、お受けいたします 」 前世なら有り得ないな 孕ませセックスをすることを、公衆の面前で言うなんて それも周りにいるのは、俺と親しい連中ばかりだからこそ違和感がある こればかりは、女王蜂になってもなれないな…… 「 ロッサとヤるんだ~、ナルシスト童貞を相手にするの頑張ってね 」 『 ……アラン、茶化しは止めてくれ 』 話を終えて逃げるように玉座から下りて、廊下へと行けば先にアランが笑って告げ、その言葉にネイビーも鼻で笑う 「 実際、そうだろ。知識も無さそうな奴だ。御前が慣れてない頃にヤってたら逃げ出してたかも知れないなぁ? 」 『 ネイビーまで……… 』 確かに前の俺なら、知識だけでもあるネイビーやハクだったからこそ出来たことで あの時にロッサを選んでたら出来なかったかも知れない 彼の言葉は正しくて言い返せなければ、アランはネイビーの肩へと腕を乗せ笑った 「 俺達は応援してるだけだよ、ねー? 」 「 嗚呼、慣れた女王蜂のお手並み拝見だ。見た目よりメンタルの弱い奴だ。優しくしてやれよ、レーヌアベイユ 」 「 それじゃ頑張って、俺達のレーヌアベイユ 」 『 チッ……御前等、仲良すぎるだろ 』 互いの肩に腕を組んだまま、背を向け歩き出した二人は片手を振り、態とらしくレーヌアベイユと告げて立ち去った 『 つーか、アランとブラオンにとっては上司だろ、いいのか…あれで 』 背後から聞こえてきた足音に、誰か分かれば振り返ること無く呟けば、もう姿の見えない彼等の方を向け答えた 「 魔物ですので“上司“という概念はありませんよ。サタン様やルイ様のような絶対的な立場でしたら、フォローするなりしますが、ロッサなので…… 」 『 ロッサなのでって…… 』 「 私やネイビーの可愛いくない弟ですから 」 可愛くないって言ったな、そこは可愛い弟だと言ってフォローしろよ! 全くしない事に清々しいと視線を僅にハクへと向ければ、彼はニコッと笑顔を向けてきた 「 貴方の子が増えるのを楽しみにしています。では、仕事に戻りますね。ルビー、行きますよ 」 「 はーい!母さん、またねー! 」 歩くのが遅いルビーは後からやって来れば、ハクと共に立ち去った 嗚呼、そうかよ……皆、繁殖に慣れたなら 誰でもヤれるだろって言いたいんだろ? それ、あんまりじゃないか…… 「 っ!はぁっ……だからって、自分に…八つ当たりしないでください……っ、ンッ! 」 『 どいつもこいつも、孕ませろ。頑張れ。って、愛情がほしいよ、俺はな…… 』 帰り際に目についた、シヴァを見かけ 彼がとやかく言う前に壁へと押し当て、 そのまま言葉通りの八つ当たりをして、早々に挿入して下から突き上げ首筋へと口付けを落とせば 背を壁に当てながら腰を反らし彼は声を漏らす 相変わらず締め付けのいい肉壁を擦れば、身体は熱くなり欲を放ちたい感覚が迫る 「 今の、るいさまに……愛情が、ないき、が……あっ!うっ、んっ……! 」 『 無いね、八つ当たりだし……でも、御前は好きだよ、シヴァ…… 』 「 はぁ、ずるい……ぁ、あぁっ! 」 ネイビーより低い身長の為に、両足は地面から浮き 俺が支えるまま、打ち付けるために彼は逃げることが出来ず、頭を抱き身体へと力が入る 「 はぁ、いきそ、っ、あっ……でます、んっ、んっ! 」 『 ふっ、いいよ……イきなよ…… 』 「 ひっ!ぁあっ、もぅ、だめっ……!っ~~! 」 育児嚢を震わせ射精した彼に、口角を上げて遅れて卵子を吐き出せば、小さい卵の下で混ざる体液の音を響かせ、密かに腰を揺らせばビクビクと震える彼と視線が重なり口付けを交わす 「 ぁ、るいさま……キスしたい……もっと、ください…… 」 『 嗚呼、いいよ…… 』 素直なのは可愛いと、髪に触れられるまま口付けを交わし、ゆっくりと引き抜けば彼は地面へと脚を付け、抱き締めれば深く舌を重ねる 慣れたように片手で俺の陰茎に触れ、擦る手に時より眉を下げ、感じていれば聞こえてきた声に視線を向ける 「 なっ……この俺より先に……低級の魔物を相手にしてるなんて…… 」 『 ……御前と違う魅力がコイツにはあるんだ。文句があるなら、ヤらんぞ 』 舌をほどき、頭を首元へと押し当てるように触れればシヴァは驚く素振りを見せるも抱き締めてきた 低級と知ってても行為をしたいと思わせるのは彼だけだ 「 っ……ない……。明日、な…… 」 逃げるように立ち去ったロッサを見てから、彼がいなくなればシヴァは視線を外し、呟く 「 彼の言うとおり……自分は低級の魔物です。強い魔物は産めないのに……貴方がヤる必要はないんです……。どうか、優秀な雄と…… 」 『 シヴァ、それ以上告げるともっとヤるぞ?俺は御前だから抱くんだ 』 「 ……嬉しくて、口を開きそうです 」 『 じゃ、続けなきゃな 』 「 ン……んっ…… 」 魔王クラスの雄からしたら、シヴァのように低級クラスを相手にするのは気に入らないのだろ シヴァと仲良くなったのを知ったアランやらネイビーが少しだけ不機嫌になったのは分かっていた 彼等にとって、本来の役目を放棄して“雄“として女王蜂を奪う元下級の働き蜂は嫌うらしい そんな嫌わなくても、なんて思うが こればかりは彼等の本能だから仕方ないな… ロッサも、孕めば気分も変わるさ 雄にとって、御腹にいれば満足するらしいからな
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