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三十二話 意地で孕ませる
流石に、このまま立ち去ったら
遊んで捨てる……みたいになるよな
みたいっていうか…マジでそうなりそうな寸前の事に固まった
目の前には申し訳無さそうに落ち込んでるロッサには、いつものポジティブテンションは消え去っている
大きな体格が今は縮まってるのだが、その原因は俺のせい
“孕ませたい“と本気で思わなかったからこうなっている状態だ
よくサタンの時に、寝言だろうが孕ませたいと思わせたな…本能に勝った言葉ってスゲェなと改めて思いながら言葉を考える
『 なんで……発情して無いのに、来たんだ? 』
発情してなかった、また誘ってくれ…と言えば良かったものの
そのまま繁殖場に来た事が不思議でならない
他の連中は「発情してないので」とか「今は卵があるので孕めません」とか言い返して来るから分かるのだが、コイツの場合は其を言わなかった
言わないのが悪いのではなく…
ヤっても子は出来ないのに良いのか?ってことだ
「 ……俺は、発情がどんなものか、分からなくて……只、嬉しかったんだ……やっと…アンタに誘われたことに…… 」
『( 間違いなく、この俺のせいだ )』
今すぐに土下座して謝りたいぐらいに、俺のせいじゃないか
孕ませたくないなぁ、ヤりたくねぇな、なんて思ってたから期待してルンルン気分の雄を玩んだだけじゃないか
うわ、最低だな……俺
『 ん……ごめんな…?女体化、させてやれなくて…… 』
意味分からない謝り方にもっといい言葉は出なかったのか!って思うぐらい自分を刺したくなる
「 ……いや、謝ることはない。レーヌアベイユにとって、俺は…孕ませたいと思うような魅力的な、雄では無かったと言うことだ…… 」
『 っ…… 』
なんだろ…凄く胸が痛い
今まで散々、心の中でクソナルシスト野郎なんて思ってた事を謝りたいぐらいに、このなんだろう…
しゅんっと落ち込んでるのを見ると、抱き締めて犯したいぐらいには胸に色々突き刺さる
『 十分、魅力的なのには気付いた!綺麗な模様を持ち、肉体もイイ。声だって嫌いじゃないし…それに…… 』
「 無理しなくていい…。繁殖したいと“本能的“に思わなかった時点で答えは知っている 」
『 ちょっ…… 』
「 すまない……ルイ、女王様…… 」
本能的……そう思わなかった理由はなんだ……
ヤりたくないと思いまくったせいか?
それでも、無性別だって孕ませたいと思うぐらいには興奮したことがあった
それなのに、ロッサにはセックスとしては興奮する部分は確かにあるが“繁殖させる“と言う気持ちにはならないのは何故だ?
『 ……俺の方こそ、すまない 』
繁殖場に来て不発で終わったのは初めてだ
居たたまれなくなったロッサは、奥の部屋から出て行き俺は一人で考えても仕方無いから、ある人物に聞くことにした
「 ……一つ考えられるのは、繁殖能力でしょう 」
『 繁殖能力? 』
ハクを掴まえて何気無く問えば、彼は書斎に連れてきてから本を探りながら答えてくれた
歴代の女王蜂の事が書かれた一冊の本によって、導き出された答えは“繁殖能力“だった
「 余り事例は有りませんが、本能的に女王蜂は強い子孫を残す意思があり、繁殖能力が強い雄を選びます。それはヤりたいという欲ではなく…その雄にある能力です 」
『 んー……すまない、よく分からないから噛み砕いて教えてくれ 』
能力、魔力共にロッサは魔王クラスだからいいのだと思うんだが……
頭が痛くなりそうな感覚に首を傾げれば、ハクも言葉を選ぶのに悩むように顎に手を置き唸るような声を漏らす
「 ん~……此ばかりは女王蜂しか分からない本質なので……彼が繁殖に適さない雄ってことになるんでしょう 」
『 魔王クラスであり、一国の王がそんな事があるのか? 』
「 クロエ様の時はとりあえずヤって、孕まなければそのままスルーみたいな考えだったので……一匹程度、適さなくても深く考える事はなく……原因が…… 」
『 じゃ、俺が繁殖場で会おう。と心が無くとも言っても、発情することはするのか? 』
「 えぇ“受け入れる“と言う意思があれば……あ…… 」
ふっとそこでハクは有ることを思い付いたように言葉を止めた
俺に意志が無くとも繁殖出来るのは分かったのだが、それがどうした?と思っていれば急に彼の表情は明るくなった
「 同じことの事例は、ネイビー様にも私にもありました! 」
『 えっ、どういうこと? 』
急に事例があったと言われて、頭に浮かぶ疑問符が増えていくばかり
一体どういうことなのか?と問えば彼は答えた
「 クロエ様の時に、ネイビー様や私は繁殖場に行ったのですが、同じく不発でした 」
『 それは相手が母親だからって理由だろ? 』
「 いえ、関係有りませんよ。雄にもプライドが有ります。つまり、ロッサ様は少なからずルイ様の子は孕みたくないと思ったのでしょうね 」
『 ……つまり俺が、フラれてたわけ? 』
「 はい!そうなります 」
笑顔で頷かれたけど全然嬉しくないんだ
寧ろイラッとしたぞ、
初めて会った時から孕ませてくれとか、この俺が相手になろう!なんて言ってた奴が、
実は産みたくなかった?は?マジでボコすぞ
『 なにあいつ、散々…交尾を求めてた口振りだったのに心ではそんな事無かったのか? 』
「 いえ、ロッサは童貞なので、繁殖に協力したいと言う認識はあっても“孕むんで産む“という事まで考えが追い付かなかった幼い子でしょうね 」
『 幼い子で済ませれたら、あのデカい体格を疑いたくなるぞ 』
「 魔物にも成長速度があります。特にロッサは馬鹿で単純なので、繁殖を理解してないでしょうね 」
このお兄ちゃん、滅茶苦茶グサグサ言ってるけど
相手は一国の王だぜ?王子かは知らんが…
だから、単純馬鹿だからこそアランが簡単に部下になれるわけか
そしてブラオンが半年近く帰ってこなくても、最近まで分からなかったのか……
なんだよ、彼奴……餓鬼かよ
ヒーローものの主人公に本気でなれると思って、玩具のベルト着けて遊んでるような餓鬼じゃないか
本気で交尾と繁殖の意味を理解してないから、発情期に入らなかったのか……はぁ?
『 なんだそれ……すげー疲れた 』
「 だから俺は、優しくしてやれよ。と言ったが? 」
『 ………… 』
背後から聞こえてきた声に、顔を上げ見上げれば書斎の中に入って来るなり横で立ったネイビーは嘲笑うかのように悪笑みを浮かべていた
なんてドス黒い 表情なんだ!
『 優しくしてやれよって…そう言う…… 』
「 実際、俺も…クロエにはもう少し興奮させて貰えたなら繁殖してただろうからな 」
「 えぇ、遊ばれてるのが分かると萎えますよね 」
萎えるとかハクの口から聞いたことに驚きなんだが
興奮してたら繁殖して……
『 やらかした……発情してないことに気付いた俺が、一気に冷めたのが悪いのか…… 』
「 そのまま気付かぬフリをしてたら、良かったかも知れませんね 」
「 嗚呼、俺も“ 発情してないなんて “と言われてシネババァなんて思ったからな…… 」
『 じゃ、シネって思われたのか…… 』
心が痛いし、色々と突き刺さる
もうライフゲージが赤になりそうなぐらいに心にダメージをくらった
「 そこまでは思ってないと思いますが、落ち込んだのは確かでしょうね 」
『 じゃ……俺はどうすればいいんだよ? 』
「 寧ろ、御前がどうしたいんだ? 」
『 ……なにが? 』
質問を質問で返された事に疑問になり
ネイビーへと視線をやれば、彼は告げた
「 御前は彼奴とヤりたく無かったんだろ?ならヤらなくていいチャンスだ。雄は他にもいるからな。だが、ヤりたいならもう一度声をかければ雄は頷くものだ。御前次第だ 」
『 俺…… 』
「 えぇ、少なからず貴方から繁殖したいという気持ちがあれば、雄は受け入れようとします。どんなに知識が無くとも本能的に感じます。腹の下が疼くので…… 」
腹の下へと触るハクの動作と、ロッサが達する前に疼くと言ってた意味に気付いた
どんなに発情して、女体が間に合わなくても行為に入れば時間をかけて繁殖をすることだって可能だったはず
不発で止めたのは…俺のせいだ……
『 ……あ、そうか 』
「 今の御前は、彼奴との子が欲しいか?もし、欲しいならばちゃんと言ってやれ 」
『 ……たまに良い事を言うよな 』
「 たまにか?いつもだろ 」
気になったことは考え込む前に、聞いた方がいい事を実感する
今なら、彼等がクロエとできなかったと言う話を聞いても笑うことが無いぐらいに受け入れられる
当たり前のように雄を遊び、ちょっとヤりたいと思って発情期に入ってないことに残念だと思ってしまったのは俺が悪い
彼等の言った通りに、いつものようにそれでといいと犯せばこう悩むことも無かったのだろうな…
少なからずロッサは、あの時…行為の続きを求めていた
『 そうだな、ありがとう……。今なら彼奴との子も悪くないなって思うよ 』
「 女王蜂がそう思うのでしたら、後は彼が受け入れる気があれば大丈夫でしょう。リベンジ、頑張って下さい 」
『 嗚呼、頑張ってみるさ 』
色々教えてくれた二人に礼を告げては、書斎から出た
もう一度、ロッサと話して、彼が望むかどうかを聞いてみよう
寧ろ、もう意地で孕ませてやる気がある
『 あ、いた…。なぁ、ロッサ 』
「 ん? 」
彼が使っている客室へと行けば、僅に開いてるままの扉へと覗けば、着替えて荷物の整理をしてる姿を見かけた
これはイイタイミングだとばかりに、一つ息を整えては問い掛ける
『 なぁ、もう一度…交尾をしてみないか? 』
「 えっ、やだ 」
『 ………… 』
やっぱり俺ってフラれてねぇ!!?
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