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☆オマケ☆ 花見
この世界に、いや…元いた世界に戻ってきて百年の月日が流れた
俺達の姿は子供を覗いて、誰一人衰えることは無かった
まるで時間が止まったように、これが残り千年以上生きる魔王の名残と言うように
俺達だけが時代の流れに置き去りにされたように止まっていく
日付の変わる0時を何度も巻き戻してるように、
いつしか周りから“あの家族は気味が悪い“と言われるようになり引っ越しを繰り返したり、
嫁を持つ人達は衰えない為に亡くなっていく彼女達と別れた
最初はジャックも違和感を覚えて、黙っていた俺達に色々言ってきたのだが…理解し高校生辺りから容姿の変化が減り諦め気味になり
今では妹のルアナと共に二十代前半の容姿で止まっていた
そうなると、ジャックもルアナも受け入れるしか無いのだろうな
「 此処に来たときに持ってきた桜の木。今では立派だよねー 」
『 そうだな 』
日本ではないヨーロッパの山の奥
人を避けて、国を変え、そして人里を離れた此所は、一年を通して肌寒く冬はくそ寒い場所
此所が定着したのには一つ理由があった
それはアランの生まれ故郷が近いからだ
日本を十数年事に転々と移動するのも面倒で、
それならいっそ、人と関わりが少ない山の中でいいんじゃないかって
膨大な自然保護区の中なら、たまに現地ガイドが通るだけで変な奴は少ない
居たところで、俺達に狩られるだけ
人を食えると知ったのは、そう最近の話ではないほどに最初の頃だったな
ヒラリと舞い落ちる淡い桃色の花弁
日本から苗を持ってきたはずなのに、三十年経過すれば立派な大木へと変わっていた
木も成長するのに、俺達は何一つ変わらないよな
『 もう、俺達を知る人間も少ないだろうな 』
「 そりゃ生きてたら百二十歳とかなってるし。そこまで寿命は延びてないし…いないんじゃないかな?ご長寿さんが多いとは思えないし 」
『 そうだな。皆……七十から八十辺りで死んでいったな 』
「 大学のクラスメートに美和子さんいたけど、確か……九十二歳で亡くなった気が……あの人が知るなかで一番長かったかな 」
『 ふはっ、いつの大学だよ。何度通ってると思ってんだ 』
「 それもそうか。俺も曖昧だし 」
何度就職先を変えたか、何度大学に通ったか、十年間で連続で大学に行ったこともあった
暇潰しのように生きてきた時間のなかで、出逢った人数の方が多くて名前なんて言われても覚えてるはずもない
金色の髪を揺らし、にこやかに笑ったアランの表情はこの世界に戻ってきてから変わることが無かった
親友は亡くなり、最後まで不気味な奴等だと笑って死んで
母や親戚は、悪魔の子だと嘆いて死んでいった
別れを経験しても一度も泣くことは無かった、その魂とはいつか出逢えるのだから
「 おーい、父さん。ちょっと手伝って! 」
「 はーい!今行く 」
聞こえてきた声に振り返れば、ジャックは片手を振りアランを呼んでいた
俺が手伝うより効率が良いことをよく知っている
彼奴は数回恋人が出来て、一度結婚をしたが容姿が変わらないことに気味悪がられ離婚してたな
俺とアラン以外はバツがついてるほど、色々な経験をしたと思う
桜の木を眺め、そっと手を伸ばせば感じる温かさや鼓動に笑みを溢す
『 ……沢山の事を経験した。沢山の人と出逢いと別れを繰り返した。俺は…この世界を十分満喫できたと思う 』
風が吹き抜け、散る花弁はまるで“そうだね“と微笑んでるように思える
「 今日は俺とルイが再会した日だからケーキ準備したんだー 」
「 シッ!それ内緒じゃん! 」
「 あ、そうだった 」
「 お父さんの馬鹿~ 」
「 ははっ、つい嬉しくて 」
「 つーか。記念日多過ぎて俺等が忘れてるよ 」
背後に聞こえる家族の声は、暖かく心地のいいものがある
喧嘩もしたが、仲良くなって、此処までついてきてくれた俺の大切な家族
彼等の存在はきっと魔界でも宝物になるだろう
「 相変わらず御前の家族は騒がしな? 」
『 ……ソラ兄 』
「 よっ、久しぶり 」
「 俺達も来てるよー! 」
「 お久しぶりです! 」
声のする方を見れば、やって来た兄の紺空とその息子である赤司、そして片手を振った狛
銀を探すために視線を動かせば、紺空は告げた
「 彼奴は先に行ったぞ。時間だとさ 」
「 えぇ、お父様は三十年ほど前に…… 」
『 随分と前だったのか……忘れていた 』
「 無理もないさ。時間がゆっくりしてるからいつの間にか何年だって経過してる 」
俺達に寿命はない、そう言いたいところだがタイムリミットは存在する
一番最初は父親であったルカだった、また帰ってこないと思ってたんだがいつの間にかこの世界から消えたらしい
つまり、この世界で“死“が訪れ亡くなっていた
次に、長男の銀……三十年前ということは、もう紅と魁はいないだろうな
今日の集まりに参加するという話しは入ってこなかった
いつの間にか、一人ずつ減っていく
「 そんな顔をするな。御前の言う……向こうの世界で会えるんだろう? 」
『 まぁ、多分な……。でも、覚えてないだろうからきっと他人のやり直しだ 』
「 それもいいんじゃないか。何度でもやり直せばいい 」
『 よく言うよ……思い出して無いくせに 』
「 嗚呼、さっぱりな 」
ネイビー……いや、紺空は衰えないのを知ってから俺に問い掛けてきた
それはサタンが居なくなった後から……
言うつもりは無かったが、此処まで衰えない理由を教えなければきっと生きていくのが大変だろうと判断して、人間を止めてしまった経由を話した
彼は驚く様子も無く、ただ少し笑って“ そうか、面白いな “と呟いた
その面白いな、って言葉は楽しそうでは無くどこか寂しそうに聞こえたんだ
愛する妻と共に衰えることが出来ず、いつ死ぬかも分からないまま時間だけが過ぎていく
それが少しだけ、俺達にとって怖いと思うんだ
楽しそうに笑っていても、いつ終わるか分からないこの世界での生活は息苦しい
『 まぁいいけど、さて……酒でも飲もうぜ。アランが準備して…… 』
「 なぁ、瑠衣 」
『 ん、なんだ? 』
彼等の元に行こうと足を動かせば、呼び止められた事に振り返る
まともに会ったのは何年ぶりのはずなのにその感覚がないのは俺だけだろうか
もう少し熱烈な再会が会ったはずなのに、また会える
そう思ってしまうから、父さん(サタン)も銀(ハク)も…まともな御別れは言えてなかった
「 俺は……御前が好きだ。家族として、妹として…… 」
『 ん?ありがとう 』
「 だからもし……御前の言う…死後の世界で会えるなら、俺が忘れていても……出会ってはくれないか 」
『 それは、その時次第だ 』
魔界での関係は、知らない方がいい
これはずっと俺とアランだけ覚えていれば十分だ
墓まで持っていく
そのつもりで誰にも話してはない
唯一、記憶を取り戻した一羽の烏以外は知っている
「 そうだな……死後の事なんてその時次第か 」
ふっと笑った兄は、脚を動かし俺の横を通り過ぎ子供達とアランの元へと向かった
『 ……知らなくていいよな… 』
「 そうですね 」
ポツリと呟き、グラッと動いた身体を支えた人物は
桜の木の上で姿を見せていた烏
今は人の姿を得て、俺を軽く抱き止め頷いた
「 自分はあの人の後輩ですが、今は貴女の使い魔でもある。そろそろ時間なんですね? 」
『 ……嗚呼、騒ぎそうな連中の事は頼むぞ 』
「 はい。此方の事はお任せください……我が女王様 」
『 その名で呼ぶのは、死後にしてくれと何度言えば…… 』
「 すみません。自分にとって変わらないので 」
シヴァ、いや……一輝
何故、記憶が戻ったのかは知らないが…
時間が経過するにつれ、誰よりも前の世界にいた頃の姿へと変えることの出来る人物へとなっていた
烏から人の姿なんて直ぐに出来て、紺空に連絡である手紙を持っていったのも彼だ
俺達は人間らしいTVやスマホを止めたから、古典的な連絡手段は文通にしてた
俺の、この世界での時間はもう無い
それに気付いたからこそ、もう一度皆に会いたかった
『 そう、なら……向こうでも変わらずいてくれよ。彼奴と違って……御前はいい立場なんだ 』
「 光栄ですね。勿論、何処までも……御供しますよ 」
アランには愛情があり、独占欲が含まれている
けれど一輝にはそれがなく、割りきって接してくれるから色々助かっている
他のジャックやルビーとは違った立場は俺にとって都合が良かった
「 瑠衣!こっち来て、ケーキ食べようって……瑠衣? 」
「「 母さん?/お母さん? 」」
『 はぁ、ヤバイな。予想以上に時間がなかった…… 』
もう少しいけるかな、そう思ったのにそんな事も無かった
百三十年、いつか来るだろうと思っていた
こっちに来たことで魔力を削っていたから、彼等より時間がないことも
寿命だったサタンやハクとは違った感覚だとよく分かる
まるで引き戻されるような胸の痛みに息は詰まる
「 おい!瑠衣、どうしたんだ!? 」
「 瑠衣!持病!? 」
『 持ってねぇよ。いや、ある意味……持ってたのかも知れないな 』
一輝の腕から離れ桜の木へと行き、そっと背中を当てれば座り込む
駆け寄ってくる彼等の言葉に笑っては、青空と揺れる桜を見ては笑みを溢す
『 ……アラン、そろそろ時間だ。御前等は残り時間を楽しめ 』
「 っ……待っててね……ちゃんと行くから 」
『 嗚呼、待ってる 』
「 どういうことだよ!母さん!父さんも説明しろよ!! 」
地面から現れる錆びた鎖は、俺の身体へと巻き付いていく
枷が現れ手足を固定し、首に首輪が現れ鎖が繋がり重い金属音が響く
鎖を持とうとするジャックの手を掴んだアランと一輝は其々に小さく首を振った
『 ジャック……御前も立派な医師になったな……。俺は誇らしいよ 』
「 っ……そうだろう。俺は必ず達成する出来た息子なんだ…… 」
『 嗚呼、よく知ってる 』
誰が死んでも泣かなかったのに、ジャックの瞳は涙で濡れ頬を大粒の涙が落ちていく
片手を伸ばせば、膝を付いたジャックの頬に触れ何度も頭を撫でる
『 ……俺達は何度でも会える。だからそう泣くな 』
「 忘れてたら……また、忘れてたら…… 」
『 それでもいいさ。御前はどんなに忘れても、きっと俺とアランを気に入る…… 』
敵になっても殺さなかった御前が、また出逢ったときに俺達を殺すとは思えない
だから大丈夫だと、アランと話していたんだ
僅かに頷いたアランは、彼の肩に触れれば
ルアナも兄の涙に誘われたように泣いていた
『 ルアナ……御前が一番若い……でも、きっと……また会える。その時も……俺の子だと嬉しいな 』
「 ん……お母さんの、子供になる……何度も、何度も……ルアナ、ずっと傍にいる 」
『 ありがとう………。俺は、最後に家族と、花見が出来て良かったよ。一輝との約束も叶えられたし……満足だ、満足すぎる現世だった…… 』
来世はどうなるか想像出来る
けれどそれを否定して、逃げたり、顔を背けたり、思わないのは、此所で後悔無く生きて行けたからだろうな
前は、後悔ばかりあって愛に飢えてからな
『 ふっ……楽しかった…… 』
「「 瑠衣!! 」」
サヨナラは言わない、また会えるからな
だから行ってくると、微笑んだ
鎖がキツく締め付けると同時に
アランが伸ばした手は灰を掴んだ
俺は“ 魔王 “としての寿命を終えた
「 っ……魂の寿命が終われば……それは、君じゃないんだよ……瑠衣……。それでも……何度でも、君を探して……会うから……俺は、しつこくて、諦め悪いから…… 」
もし、また出逢うなら……
その時は変な立場同士じゃなければいいな……
またな……アラン
そして、初めまして
オマケ 花見 完結
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あとがき?
此処まで観覧ありがとうございました!
コメントで、その後はどんな風に
なんて言ってくださった方がいたので書いてみました♪
島を買うのもいいですが、そこまで給料無いと思うので(転勤族だから?)なので
お金無くても生活できそうな、山の中で暮らしてることにしました
他に転勤族のままとか色々考えたけど、やっぱり老後は落ち着ける場所に……と思い山の中でひっそり暮らしてるかなーと
月1回、車で買いだめしてる程度で
森に住む鹿やら食べてたんでしょうね(?)
アランは野生の狼と仲良くしてる、みたいな話やら考えていましたが止めました(笑)
寧ろ、アランは森の動物達と仲良さそう……
夢の国に出てくるプリンセス達みたいに(笑)
(なんの話だ)
ルイは、アランを人間界に送る→五百年の寿命と引き換えに。
自分と家族を人間界に送る→二千年以上の寿命と引き換えにやってるので
人間界で百三十年近く生きれた事は奇跡に近いです!
サタンやハク、他のメンバーは魔王としても寿命が近かったので、先に亡くなりました
ルイは人間界での寿命(魔物としての魂)を終えたので
次に行く時は、人間界に戻ります
やっぱり一回は死んで人間の魂を終え、魔物になって、また魔物で死んでるから人間かな
いや、ちょっとは頑張ったご褒美に
神様の裁判で人間ではなく、天使とかになって欲しいけど……
ルイは息子のジャックが“効率悪い“というほど動かないので、まともに家事をしてたかも怪しいですし、どうでしょうね
そこは、皆さんにお任せします(笑)
ルイやアランを裁判してあげてくださいw
こんなそんな(?)で花見なのか、花見じゃないか分からないオマケを書きましたが
此処までお付き合いくださりありがとうございます!
大変な御時世ですが、皆さんも健康に気をつけて
乗り越えていきましょう♪
またどこかでお会いしましょ!ヽ(*´▽)ノ♪
※この作品はこの先も販売目的はございません
何かに応募するつもりもないので
安心して読んでください(?)
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