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2.おるすばん狐
狐乃音は、やりきったと思った。腰に両手を当てて、ふんすっと鼻で息をつき、満足感を覚えていた。
「お洗濯もお掃除も、完了なのです」
巫女装束が邪魔にならないようにと、結んでいたたすきを解く。そして、細くて白くてふにふにした腕でガッツポーズ。
狐乃音は、ただ無為に居候の身に甘んじているわけではなかった。日々、こうしてきちんとお手伝いをして、お兄さんをサポートするのだ。
そのお兄さんは『気を使わなくていいんだよ』と優しく言ってくれるけれど、真面目な狐乃音は、それではいけないと思ったのだ。それではただのすねかじりです! 貧乏神です! と。
「浴室乾燥というものは、本当に便利なのです」
てくのろじーというものは、魔法みたいに優れものだと、狐乃音はしみじみと思った。
たとえお外がどんなにザーザー降りの大雨だとしても、しっかりと洗濯物を乾かすことができるのだ。
「魔法と見分けがつきませんね」
そんなことを思っていると、喉が乾いてきたことに気付く。
そうだ。冷蔵庫にりんごジュースがあると、お兄さんが言っていた。では、早速飲ませてもらいます……。
「うきゅ?」
冷蔵庫の扉を開けたとき、狐乃音はふと、瓶に入った茶色い飲み物を目にした。
「あれれ? これはもしかして、コーヒー牛乳というものでしょうか?」
前に、お兄さんに飲ませてもらったことを思い出した。
ジュースとはまた違って、甘くて香ばしくて、とてもおいしかった。今ではジュースと共に、狐乃音のお気に入り飲み物の一つになっていた。
「いただきます」
狐乃音はそれを、飲んでみることにした。
ちなみに、瓶に貼られたラベルには『カルーア・コーヒーリキュール alc20%』と、英語で書かれていた。
狐乃音にはそれがどういう意味なのか、わかっていなかった。
ただ、うきうきしながら、無邪気な笑顔の狐乃音。瓶を落としたりしないようにしっかり持って、椅子に腰かけるのだった。
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