秘境の平和実行部隊

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秘境の平和実行部隊

「平和を願うだけでは、実現に3万年かかってしまうぞ!」 ここは人里離れた秘境、カツアゲ樹林。 今は真夏、今日の最高気温は36度。 熱波でセミも猫も犬も人間もクラゲもみんな伸びている。 唯一の科学文明、エアコン様が装備されている王室。 作戦指揮所に10名の当直兵が集まる。 信じられないくらいの自然を裏切る冷気が、隊員を生存させる。 「ちょっと、アキバさん」 「そこに立つと風が来ないでしょう」 「あなただけのエアコン兵器じゃないのよ?」 「心外でありますゴンドウ中尉殿」 「自分は水際で冷凍光線から自軍を守っているのであります!」 「・・・・・」 「みなさん、今日は何も仕事はないですから」 「早く自室で待機してください」 「・・・ジグモ司令官殿」 「自分だけ超テクノロジーを貪るのはど~したものかと」 今日も平和維持軍ではなくて、平和完遂軍はヒマだ。 自国の内地、北の山奥で平和実行を完遂させる目的が見えない。 「ゴンドウ中尉殿、軍属がピアスしちゃまずくない?」 「いいのよ暇なんだから」 「アキバさん、この部隊設立は何十年前か知ってる?」 「はい、正確な情報では99年前の今月今夜です」 「・・・あなた私が本読まないからって舐めてるでしょう?」 「心外でありますゴンドウ中尉殿」 「自分は別に中尉の脇の下を舐める性癖は持っておりません」 「・・・・・」 「こいつらの発言を本にして売り出せないかな?」 大日ノ下軍、カツアゲ駐屯地。独立歩兵大隊・平和完遂軍。 99部隊のコントが無駄に消耗されている。 平和完遂軍と言っても何をどうすればいいかマニュアルも軍令もない。 味方の近代武装軍は、各地の海岸で侵略者と戦っている最中。 トランジスタラジヲのお昼のニュースから、 戦地の戦果報告が繰り返される。 王室に居座る兵10名は、焦燥感に苛立つ。 「くそう!」 「自分も敵軍を駆逐したいであります!」 「ゴタンダさん、何も武器が無いのにど~やって駆逐するの?」 「装甲車も輸送機もヘリも乗り物すらないのよ?」 「徒歩でこの秘境から生きて出られると思ってるの?」 「ゴンドウ中尉殿!」 「何もないのならスル事は決まってます!」 「うわ~!!」 「アキバ!ズボンとパンツを脱ぐなあ!!」 「きゃー!!」 バタバタバタ 「バタバタしてますなあ」 「暑苦しいですね」 じりじりじりじり がちゃ 「はい、こちらホテル・ハンニバル」 「うん、うん・・・」 「了解」 がちゃん 「・・・・」 「ジグモ指令・・・事件ですか?」 「緊急指令、一丁目の山田さんの奥さんがお産だ」 「全軍出動!」 「これは訓練ではない!」 「え~・・・また私が産婆するのお」 「免許無いから知らないわよ?」 「ゴンドウ中尉の手際は見事であります」 「やはり手馴れておる」 「私は子供産んだことはありません!」 「軍用車に乗り込め、運転手は君だ!」 今日も平和完遂軍部隊は平和だ。 カツアゲ樹林は緑だらけで人間が居るかどうか、上空からでは判らない。補給のヘリがいつも迷子になる。 続くと思う・・・
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