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共同生活
翌日、ニュースで大型台風が接近している事を知った。
ベランダの青虫は大丈夫だろうか。
心配になった私は、プランターをリビングに入れた。
彼女の優子は虫が嫌いだが仕事が忙しくて最近は会ってもいないし、うちにも来ない。
青虫を室内に入れたとて、気付かれる事もないだろう。
室内で見る青虫は、ベランダで見るよりも丸々と大きく見えた。
リビングにプランターを置いてみると、それはそれで、なかなか良いものだった。
朝起きるとコーヒーを飲みながら青虫を眺め、会社から帰ると青虫のキャベツを追加してから、一緒に夜ご飯を食べるようになった。
眠れない夜にはスマホを見ずに青虫に話しかけた。
いつの間にか、青虫との暮らしは私の生活の一部となっていた。
そんな生活を続けているうちに、私はいずれ蝶々になって飛び立っていくであろう青虫と離れる事に一抹の寂しさを感じるようになった。
ネットで調べた所によれば、青虫は約二週間でサナギとなり蝶々になるという。
しかし、この青虫は半年経っても、まだ青虫のままだ。
何故だろう。
これは蝶々の幼虫ではないのか?
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