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しかし、どう見ても形といい色合いといい、一般的な青虫と大差ないように見える。 ただ食欲は留まるところを知らず、最近は一日でキャベツ一玉を食べてしまうようになった。 先日、八百屋でキャベツを四玉抱えレジに行くと「何か飲食店、されてるんですか?」と尋ねられた。 数日おきに買っていくのだから、そう思うのも無理はない。 笑ってごまかし、その場を去った。 そうやって、青虫の世話に終われながら月日は流れていった。 とある冬の日、私は風邪を引き寝込んでしまった。 熱もあり、体が思うように動かない。 よたよたしながらプランターを見に行くと、案の定キャベツは跡形もなくなり青虫は土の上でじっとしていた。 私は焦った。 青虫が餓死したらどうしよう。 しかし、キャベツを買いに行く力はない。 何か食べる物はないのか。 急いで冷蔵庫を開ける。 何か野菜があれば……。 しかし野菜と言ってもジャガイモや玉ねぎしかなく、今までキャベツを食べてきた青虫がそれらを食べるとは思えなかった。 仕方ない。 青虫には悪いが明日、体調が良くなってから八百屋に行くことにしよう。 「ごめんな。 その代わり、俺も何も食べないから許してくれよな」 そう言うと青虫は目玉のような模様の頭を、微かに動かすのであった。
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