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母の再婚相手
小学校卒業が間近のある日ーー。
「ただいまー」
当時、詩織は母と二人だけの生活。玄関の扉を開けると同時に、帰宅を知らせる言葉を口にしてみるが、返事はない。いつもの事だった。
母は夜遅くまで仕事に……、
「お帰り」
行ってるはず……?
返ってきた言葉に戸惑いながら、声の主をじっと見つめた。詩織が視界に捕らえた姿は母ではない。フサフサの耳を生やした男の子だった。
「お、お、お化け!? い、嫌だ! あっち行け! 鬼は外!」
豆の代わりに、思いっきりのぶん投げた家の鍵をキャッチした男の子は、こてんと可愛らしく首を傾げる。
「鬼? 鬼は僕じゃないよ? 一番上の兄貴だけど?」
「はぁ!?」
頭に耳を生やした男の子は、何を言っているのか、意味がサッパリ分からない。詩織が眉をひそめて、わけの分からない男の子を睨み付けていると……。
「あら? 詩織、帰ってたのね」
仕事に行ってるはずの母が姿を見せた。
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