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平然としている母の側に、フサフサの耳が生えた男の子が居るが……。
(見えてないのか……? もしかしたら、これは夢なのかもしれない。そうだ! 変な夢を見ているのに決まってる)
そう考えた詩織は夢である事を確かめようと、頬を思いっきりつねった。自分ではなく、男の子の……。
「痛っ!」
「って、詩織!? 駄目よ! お兄ちゃんの頬をつねるなんて!」
(は?お兄ちゃん……?)と、詩織は母の言葉に疑問を抱く。彼女には兄弟などいないのだ。
「私に兄貴はいない。それより、悪夢から目覚めなければ……」
詩織は更に力をこめてつねった。
「いっいっ痛いーっ!」
「詩織ーっ!」
頬をつねっても、フサフサの耳をした変な男の子は消えず……。
「消えない!? って事は、現実!?」
「それより、自分の頬をつねるでしょ!? 普通は!」
「そうよ! 詩織、謝りなさい!」
母に謝るよう促されたが、パニックに陥っていた詩織はそれどころじゃない。涙目でブンブン顔を横に振って見せた。
「ったく。落ち着いたら謝りなさいよ!」
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