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10章
グラビティシャドーは、ストリング軍を全滅させたクロエの姿を眺めていると、ふと背後から気配を感じた。
現在この空へと浮かんでいるストリング城にいるのは彼とシープ·グレイだけだ。
もし気配を感じたのなら、それはグレイであるはずだったが――。
「同類が2つ。しかもおかしな反応がもう1つ……。出て来なよ。もう君らがいるのはわかっているんだ」
グラビティシャドーがそう言うと、彼にいた大広間の扉が突然吹き飛ばされた。
そこには、緑のジャケットを着た男――ラスグリーン·ダルオレンジと、ローズ·テネシーグレッチことロミー。
そして、着物姿の女性クリア·ベルサウンドの3人が立っている。
グラビティシャドーは3人の姿を確認すると、薄ら笑いを浮かべた。
「ロミーだっけ? 性懲にもなくよく来たね」
ロミーは何も返事をせずに、ただグラビティシャドーを睨み続けている。
グラビティシャドーは、その態度を見て苛立ちながらも言葉を続ける。
「で、そっちの緑の男は火のもう1人の子供か? なるほどなるほど。助っ人を連れてきたわけだ」
次にラスグリーンを見たグラビティシャドー。
その視線にラスグリーンは、ニッコリと笑みを返した。
「それと、もう1人は……ただの人間……? でも……そうか……精霊ってやつだね。おかしな反応はその2本の剣からか」
クリアが持つ剣――日本刀は、小雪、小鉄という2匹の犬が変化したものだ。
白い刀が小雪、黒い刀が小鉄――。
この2匹2本は、彼女の亡き母が祀っていた寺に供えられ、封印されていたものだ。
地域に住む神々の力――クリアはその加護により、マシーナリーウイルス適合者や、合成種キメラ並みの戦闘能力を持っている。
グラビティシャドーは、3人を歓迎でもするかのように両手を広げた。
すると、次第に彼の体が宙へと浮いていく。
グラビティシャドーは重力を操る能力を持っていた。
今の彼は自分にかかる重力を減らして浮かんでいる。
いわゆる反重力というやつだ。
「3対1なら勝てるとでも思ったのかい?」
宙に浮きながら面倒くさそうに言うグラビティシャドー。
そんな彼にラスグリーンは炎を放ち、クリアは2本の刀を振って斬撃を飛ばした。
緑と黒のスパイラル状の炎と、波動の刃がグラビティシャドーに襲い掛かる。
だが――。
「へえ~スゴい技だな。でも当たらないと意味ないよ」
グラビティシャドーは空中を動いて、2人の攻撃を躱した。
重力を操る彼は、ヒョイッとジャンプするだけで何10メートルも飛べる軽快な動きが可能だ。
グラビティシャドーを捉えることは、並大抵ではないと思われたが――。
「……遅い」
「なっ!? バカな!?」
いつの間にか目の前に現れたロミー。
その蹴りを顔面に喰らったグラビティシャドーは、自らの力――無重力の状態で天井へと吹き飛ばされてしまった。
「まずは優先、最優先でお前を殺す。そして、次はクロエだ」
天井に突き刺さったグラビティシャドーを見上げながら、ロミーが静かに声をあげた。
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