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1章
軍幕テントが並ぶ野営地。
反帝国組織バイオナンバーの陣で、食事をのせたトレイを運ぶ銀髪の女性――エヌエー。
彼女が並んでいるテントの一つに入ると、そこには深い青い軍服姿の少女――アン·テネシーグレッチがいた。
アンは震えながら簡易ベットの上で横になっている。
その近くには、電気仕掛けの子羊ニコがいる。
ニコは、エヌエーを見て嬉しそうに鳴いた。
ニコに笑みを返したエヌエーは、ベットの側にあった机にトレイを置き、優しい声で食事を持ってきたことを伝えた。
だが、アンは毛布を被った状態で黙ったままだった。
「アン、少しでもいいから食べないと……」
エヌエーは、再び穏やかな声を出したが、彼女が食事を取ることはなかった。
その様子を見ていたニコは、ただ鳴くことしかできなかった。
アンはロミー、ニコと共に、ラスグリーンとクリアの乗った高速飛行船ホワイトファルコン号に助けられ、ストリング城を脱出した。
その後、ラスグリーンの案で、飛行船内にあった通信機器を使い、エヌエーに連絡(連絡先はシックスの残していたメモに書いてあった)。
そして、彼女たちと合流――バイオナンバーの野営地で休ませてもらうことになった。
そのときにエヌエー以外の人間――。
彼女の恋人であるブラッドと、この野営地を指揮するメディスンも、ラスグリーンやクリア、ロミーと会っていた。
メディスン、ブラッド、エヌエーの三人は、バイオナンバーの兵士である。
そこに、敵対しているストリング帝国の将軍であるロミーが現れたことは大問題だった。
さらに、その帝国の将軍がアンの妹であると知った三人は言葉を失っていた。
仲間を散々殺した帝国の少女将軍――。
通称“義眼の猛獣”ローズ・テネシーグレッチが目の前にいるのだ。
だが友人であり、組織内の事件を解決してくれたアンの妹であるとわかると、手など出せるはずがなかった。
それからすぐに――。
ラスグリーンはアンを預けると、ロミー、クリアを連れてホワイトファルコン号の出発の準備を始めた。
別れ際にクリアが、シックスやマナ、そしてキャス、ルーがクロエによってその身体を消されたことを話す。
それから今のクロエは、クロムの身体を乗っ取っていることも伝えた。
三人はシックスの死を聞いて、それぞれ違う反応を見せていた。
エヌエーは両膝をついて泣き始め、ブラッドはそんな彼女を支えながら、信じられないと言い続けていた。
メディスンは何も言わずに、ただ俯いていた。
「私はシックスやマナ、キャスに会ったことはありませんでしたが……」
クリアは悲しい声で言葉を続けた。
アンから紹介したい友人がいると言われていたので、楽しみにしていたと。
三人の死んだ理由――仲間を助けるために犠牲になったと聞いて、敬意を持ったことを話した。
「私も是非お顔を合わせたかったです……」
それ以上は何も言わず、クリアは頭を下げてラスグリーンらと共に出発してしまった。
「アン……」
そう名前を呟きながら、横になっているアンの姿を心配そうに見つめるエヌエー。
だが、アンは何の言葉も返さなかった。
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