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2章
エヌエーは俯きながら、メディスンが今のアンを見て言ったことを思い出していた――。
「おいアン! お前が諦めちまってどうすんだよ!」
「そうよアン! あなたの妹や友達はクロエのところへ行っちゃったんだよ!」
完全に意気消沈しているアン。
そんな彼女にブラッドとエヌエーは必死で声を掛けた。
ブラッドもエヌエーも、シックスたちの死を聞いて落ち込んでいた。
だが、二人は自分をけしかけていた。
今は悲しんでいるよりも先に、ブラッドとエヌエーの2人は、再びアンに奮い立ってもらいたかったのだ。
現在クロエが、世界中をストリング城で回りながら、人類を滅亡させると宣言している。
止めれるものなら止めてみろと言っているのだと、2人は声をかけ続けた。
だか、アンは何も答えない。
ただ毛布にくるまっているだけだ。
ニコもブラッドやエヌエーと同じ気持ちなのか、アンの体を揺すっている。
それでも彼女は何の反応も見せない。
「寝かせておいてやれ。こいつはもう限界なんだろう」
ブラッドとエヌエーにそう言ったメディスン。
彼にそう言われた2人は言葉を止め、ニコも揺すっていた手を離した。
そして、メディスンは言葉を続けた。
もういいだろう。
アンは大事な者の死を見過ぎたのだ。
そんな彼女に、お前たちはまた戦えと言うのか?
それは随分と残酷だなと、彼は言った。
「そいつは放っておいてやれ。俺たちは戦いに行くぞ。どうやら帝国のほうはもう動き出したようだからな」
メディスンは背を向けたまま言うと、そのまま軍幕テントから出ていった。
クロエの人類滅亡宣言を聞いた世界中の人間たちは、クロエを倒そうと動き出し始めていた。
それはもちろんストリング帝国や、メディスンらの属するバイオナンバーも同じだった。
だが、まだ多くの場所で帝国とバイオナンバーの戦争は続いている。
この混乱時――。
世界中で戦っていた帝国とバイオ·ナンバーは、各部隊を指揮する者の性格によって左右されてしまっていた。
帝国は指導者であったレコーディー·ストリングを失い――。
バイオナンバーはすでにリーダーであったバイオが亡くなっている。
それでも、メディスンのような帝国との戦いを後に回す選択をする指揮官もいたが、すでに両軍とも統制はとれていなかった。
「……アン。ちゃんと食べてね」
エヌエーはそう言うと、悲しそうにしているニコの頭を撫でて軍幕テントから出ていった。
アンはベットで横になりながら考えていた。
戦うなんてもう嫌だ。
勝ったときでさえ何も得てこなかったのだ。
むしろ失うばかりだ。
これ以上生きていて何になる? と、彼女はそのことしか頭に浮かんでこない。
ニコはそんな苦しそうなアンを見て、ただ傍で立ち尽くしていることしかできなかった。
……アン……しっかりしてよ。
あなたはどんな状況だって、あたしたちを引っ張ってくれたじゃない。
シックスが処刑されそうになったときだって……。
あなたがもう諦めていたあたしたちに道を示してくれた……。
それとも……メディスンの言う通り、もう限界なの……?
このままじゃ世界は滅ぼされちゃうよ……。
今にも泣きそうな顔をしたエヌエーが歩いていると――。
突然空から航空機――オスプレイが降りてきた。
それは、ストリング帝国の科学力が誇る兵器の1つ――トレモロ·ビグスビー。
全長約17m 全幅約25m 全高約7m。
垂直離着陸型のそれは、ヘリコプターの垂直離着陸能力を持ちながら長距離飛行移動が可能であり、最大で約20人は乗員可能。
その帝国のものであるトレモロ·ビグスビーが、反帝国組織バイオ·ナンバーの野営地に何故と、空を見上げたエヌエーは考えていた。
「やっと来たな」
「なあメディスン。信用できるのかよ?」
エヌエーが歩いていると、前にメディスンとブラッドが現れ、何やら話をしていた。
そして、トレモロ·ビグズビーが着陸。
駆け寄ったエヌエーが、メディスンとブラッドに声をかけた。
一体こんなときに誰が来たのか? と。
すると、トレモロ·ビグズビーから人が出てきた。
その様子を見ながら、メディスンがエヌエーへ言う。
「俺もお前も、そしてブラッドもよく知っている人物だ。そして、これからクロエと戦うのに必要な男……」
三人の前に現れたのは、深い青色の軍服――アンと同じストリング帝国兵の服を着た男だった。
エヌエーは、男の姿を見て狼狽え始めていた。
「あなたは……ノピア将軍ッ!?」
そこには不機嫌そうに首に巻いたスカーフの位置を直す男――ノピア·ラシックが立っていた。
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