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37章
「どこを見てるのよ、アン·テネシーグレッチ?」
クロエはそう言うと、再び地面に足をつけた。
そして、笑みを浮かべたまま、茫然としているアンを見下すように見ている。
「肉体は手に入った。だからもうあなたはいらないわ。新しい世界を創造する前に、ここで無価値な人類ともきちんと決着をつけておかないとね」
アンは表情を強張らせて、そう言ったクロエに向かって走り出す。
そんな彼女に続こうと、倒れていた小雪と小鉄も動き出そうと藻掻いていたが、その場からは動けずにいた。
……ローズはああ言ったが、私のせいだ。
私がもっとクロエの動向に目を向けてさえすれば、あいつがローズの体を手に入れることはなかったんだ。
アンは内心で自身の不甲斐なさを責めながら、全身を機械化していく。
もはやそれは、マシーナリーウイルスによる侵食ではなく装甲。
右腕に電撃を走らせ、再びクロエを倒そうと臨戦態勢へと入る。
「ローズ……私はお前との約束を守るぞ」
そして、仲間たちの能力――。
炎、水、風、地、光の力を発動させた。
「大事……家族との約束は大事ッ!!!」
すべての力を解放して向かってくるアン。
クロエは、彼女と同じように合成種の力を発動させ、その体から光を放ち始めた。
「ふふふ、ノピア·ラシック風に言うのなら舞台の終りが近づいているってところね。さあ……終幕よ!!!」
激しくぶつかる両者。
アンが炎を出せば、クロエも同じように返し。
続けて水の刃、風の刃をを出せば、同じ力能力で応戦してくる。
それから大地を揺ゆらしても、光の波動を放っても、すべて同じ力で相殺されてしまう。
「まだまだッ!!!」
アンは機械の腕を突き出して、クロエへと殴り掛かった。
その腕からは凄まじい稲妻が迸っている。
「あら? もしかして力比べってやつ? いいわね。受けて立ってあげるわ」
クロエもアンと同じように右腕を突き出し、機械化。
ロミーの体をうごめいているマシーナリーウイルスを完全に制御してみせた。
「喧嘩を買って、挑発に乗って、あなたのやり方に応じてあげるッ!!!」
そして、雷鳴を轟かせる腕で、アンの拳に向かって右ストレートを放つ。
その衝撃で、半壊状態だった玉座の間が跡形もなく崩壊していく。
倒れていたノピアやリトルたちも、壊れた壁と共に吹き飛ばされていった。
激しく舞う土煙。
その中からやがて見えてきたものは――。
「ふふふ……。ああ~なんて……なんていい気分なのッ!!!」
ボロボロに傷ついたアンと、それを見下ろしているクロエの姿であった。
「もう最高よッ!!! この肉体ッ!!! たとえ同じ力を持っていたとしても、やはり人間じゃ私は超えられないッ!!!」
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