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6章
草木のない乾いた大地の上を、何10台もの戦闘車両が、ストリング兵の歩く速度に合わせて走っている。
その戦闘車両の名はプレイテック。
プレイテックは、その昔に南アフリカのパラマウントグループが作ったといわれる車――マローダーを思わせる外観だ。
ボディの色はサンドイエローとブッシュグリーンの2カラー(砂漠地域なら前者、森林地域なら後者を使う)。
全長6.4m 高さ2.7m 総重量10t
乗員は2人だが、8人まで同乗可能なので、最大で10人まで乗れる。
車両重量11,000~13,000kg ホイルスペース約3.5m 最大積載重量5,000kg
エンジンには6気筒ターボディ―ゼルを搭載していて、最高速度は100k/h。
防弾性能、対地雷防御性能にも優れ、ホイールは14kgのTNT火薬の爆発にも耐え、厚さ9mにも及ぶ窓ガラスは、RPG-7(ロケット推進擲弾)の攻撃も防ぐことができるため、合成種でも簡単には破壊できない。
武器はインストガンの大型タイプを車両の上部に付けていて、全方位へ電磁波を撃つことができる仕組みになっている。
ある探索してた部隊が、偶然この戦闘車両を発見し、構造を調べ、それから改良を加えて量産した。
軍の遠征時には欠かせない戦闘車両である。
そして、その上空を同じく数10台の航空機――オスプレイが飛んでいた。
ストリング帝国の科学力が誇る兵器の1つ――トレモロ·ビグスビー。
全長約17m 全幅約25m 全高約7m。
垂直離着陸型のそれは、ヘリコプターの垂直離着陸能力を持ちながら長距離飛行移動が可能であり、最大で約20人は乗員可能。
ノピアが、アンたちのいる反帝国組織の野営地まで乗ってきたものと同じものだ。
その軍隊の前衛には、ジェットパックを背負った機械兵――オートマタの集団。
特異な形状の鎧甲冑のような姿をしている人の形した元人間だ。
マシーナリーウイルスの影響によって変化したストリング兵の成れの果てである。
古い突撃銃を思わせる形をした電磁波放出装置――インストガンを構え、そのメタリックな白い装甲が、陽の光に照らされて輝いていた。
「全軍、もうすぐ目標に到着する。たとえその命が尽きようと我々の王――ストリング皇帝閣下の仇を取るのだ!」
白髪頭の指揮官――ドレッド·モーリスが、ストリング帝国兵すべてに檄を飛ばした。
モーリスは、ストリング皇帝の後の指揮を任されていた、古参の幹部の1人である。
彼は、ストリング皇帝の死を知ると、目の前にいるバイオ·ナンバー軍と和睦交渉をした。
幸いなことに、バイオ·ナンバーの指揮していた者はその申し出を受け入れた。
そして、誰よりも早く仇を討たんと、クロエのいるストリング城へと向かったのである。
今のモーリスには、クロエを八つ裂きにすることしか頭になかった。
それもそのはずだ。
モーリスは、ストリング帝国の黎明期から皇帝に仕えている軍人。
彼は、まだ帝国がその領土を広げる前から、この荒廃した世界を救えるのはレコーディー·ストリングだけだと信じてやまなかった。
皇帝の持つ豊富な知識、合理的な思考、そして、万の敵をたった1人で討ち滅ぼすことのできる圧倒的な力。
モーリスにとって皇帝は、けして明けぬ夜を終わらせる太陽と同じだった。
その希望の光が、クロエによって奪われた。
それは、彼が指揮するストリング兵たちも同じ気持ちだ。
誰もがクロエを殺さんと、インストガンに力を込めていた。
ストリング城は、もう彼らの目の前だ。
「一番乗りは王亡き軍隊か」
その行軍を、まるで蟻の群れでも見るかのように眺めているクロエ。
その傍で小柄な男――意思のある合成種ことグラビティシャドーが、面倒くさそうな表情をしていた。
「ああ~いっぱい来ちゃったよ。どうするの、ママ?」
「決まってるでしょ。わざわざここまで来てくれたのだから、歓迎してあげなきゃね」
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