7章

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7章

クロエはモーリス(ひき)いるストリング軍を見ると、そのまま(そら)へと飛び出した。 空に()かぶストリング城から落下(らっか)していくクロエ。 その体から(おだ)やかに風が()()こる。 この力はクロエが生み出した意思(いし)のある合成種(キメラ)の1人ーー。 反帝国組織(はんていこくそしき)バイオ·ナンバーの兵士であるシックスの力だった。 クロエは、彼以上に風を(あつ)りながら、まるで鳥のように空を()う。 地上にいたストリング兵たちが、その姿を確認(かくにん)していた。 あれは子供(こども)か? いや、男なのか女なのか? ストリング兵たちは、空で(おど)るように飛んでいるクロエの姿に見惚(みと)れてしまっていた。 クロム·グラッドスト―ンの体を(うば)ったクロエの今の姿は少年だ。 だが、元々中性的(ちゅうせいてき)なクロムの容姿(ようし)と、クロエの仕草(しぐさ)表情(ひょうじょう)のせいか、まるで無邪気(むじゃき)天女(てんにょ)のようだった。 「ああ……なんて心地(ここち)いいの」 クロエは全身から風を(はな)ちながら、ゆったりと下降(かこう)して行く。 モーリスは、クロエに見惚れている全軍へ(げき)を飛ばした。 その号令(ごうれい)と共に、航空機(オスプレイ)トレモロ·ビグズビ―と戦闘車両(せんとうしゃりょう)プレイテック――。 さらに、ストリング帝国の機械兵(きかいへい)オートマタや、歩兵たちが一斉(いっせい)に、電磁波放出装置(でんじはほうしゅつそうち)――インストガンを発射(はっしゃ)した。 ストリング軍の全軍による一斉射撃(しゃげき)。 これには一溜(ひとた)まりもないだろうと、モーリスが強張(こわば)った顔のままで笑みを()かべていると――。 「ああ……あなたたちの感情(かんじょう)が伝わってくるわ……。(あい)……愛なのね」 (ほとん)原型(げんけい)(とど)めていないクロエの姿が、そこにはあった。 だが、全身の肉片(にくへん)が飛び()った状態(じょうたい)で、彼女は恍惚(こうこつ)表情(ひょうじょう)を浮かべている。 その姿を見たストリング兵――。 自我(じが)のないはずの機械兵(オートマタ)ですら、クロエに(おそ)(おのの)いていた。 そのクロエの半壊(はんかい)した体からブクブクと(あわ)が立ち始めると、()き飛んだはずの(うで)や足――。 さらに、破裂(はれつ)した顔の半分が再生(さいせい)していく。 この力は以前に、雪の大陸(たいりく)にあるガーベラドームで、アンたちが戦った意思を持つ合成種(キメラ)ストーンコールドの持っていたものだ。 シックスと同じく、ストーンコールドの(かく)を喰らったクロエ。 その自己再生速度は、ストーンコールドよりも早い。 「ば、()(もの)めッ!!!」 モーリスが(さけ)ぶと、(ふたた)び全軍へ向けて指示(しじ)を出した。 クロエが再生できなくなるまで()ち続けろと、通信(つうしん)を使って伝えたが、突如(とつじょ)としてストリング軍の立っている大地(だいち)(はげ)しく()れ始める。 地震(じしん)というにはあまりにも(すさ)まじい振動(しんどう)。 もはや地上にいるストリング兵たちには(ねら)いを(さだ)めること――いや、立っていることすら困難(こんなん)状況(じょうきょう)(おちい)ってしまっていた。 それを見ていたクロエ。 完全再生した自分の体を(もてあ)びながら楽しそうに笑った。 「さあ、今度は私の(ばん)かしら?」
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