A nostalgic girl wearing a red beret ~赤いベレー帽をかぶっていたあの頃の君へ

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「しかし、この子たちはいいとして、僕は」 と純雄がいうと、 「勿論、あなたも無事では済まないかも、でも、この子たちを巻き込むわけには、さすがの警察もいかないから、とりあえず、砂町へ行って、そこから、後日、出頭して、事情聴取を受ければいいと思うわ」 と知世はいった。 「さあ、早く」 知世は、世理奈とくるすに家からの退去を促した。 「お母さん」 世理奈は、知世に抱き着いた。 それが終わると、今度は、くるすがいった。 「知世さん。私は、私なりに戦ってみようと思います」 知世は強く頷いた。 午前7時ごろ、世理奈・くるす・純雄の三人は母屋を出た。 「仮処分に従って退去されるのですね」 機動隊の隊長らしき者が尋ねると、 「当たり前でしょ」 とくるすが強く応じた。 三人は、純雄の車に乗った。 車窓越しに、機動隊員が聞いてきた。 「行き先は、東京都江東区東砂の青蓮院さくら元衆院議員のご自宅ですね」 純雄は頷いた。 車は、警察車両の先導で速やかに出発し、砂町の自宅に着くまで、警察車両が同行した。 車が出た後、強制執行が始まった。 機動隊は、作業所へ突入し、ベルトコンベヤーやオリコンなどで造られたバリケードを易々と破り、数人の男を逮捕した。 母屋に知世がいることを知り、機動隊は収穫が済んだ畑へ迂回したが、途中、窪みなどに足をとられて転倒したり、腐食した用水路の蓋を踏み抜いて落ちる隊員が続出した。 その度に、 「トラップだ!注意せよ」 との声が飛んだ。
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