復讐の座敷童

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復讐の座敷童

 ポキッ……。  「あっ、また……」  黒い詰め襟の学生が小さく呟いて、カチカチ、とシャープペンをノックして芯を出した。しかし……、ポキッ……とまた芯が折れる。  答案用紙に折れたシャーペンの芯が残した黒い線を消しゴムで乱暴に消しながら、その男子学生はチッと苛立たし気に舌打ちした。カチカチ、とまた芯を出したが、芯が折れて短くなっていたのだろう。次に書こうとしたら芯がシャープペンの軸の中に引っ込んでしまった。短くなった芯を引き抜いて、新しい芯を入れる。  ……ポキッ……  男子学生の顔が徐々に強張る。ポキッ……、シャープペンを持つ手が小刻みに震えだした。カチカチ、ポキッ。カチカチ、ポキッ。カチカチ、ポキッ……。何度やっても同じことだ。  震える親指で、シャープペンのてっぺんをカチリ、と一回だけ押す。ほんの少ししか芯は出ていない。さすがにもう折れることはなかったが、少し書くとガリッと解答用紙をこすってしまった。  私はクスクス笑った。他の真面目にテストを受けている生徒の邪魔してはいけないので、こっそりと。私の声は誰にも聞こえないと思うが、もしかしたら勘のいい子が気が付くかもしれないので、一応気を使ったのだ。  シャープペンの生徒にも私の笑い声は聞こえていないようだが、笑った拍子に揺れた空気が彼の前髪を揺らした。それと同時に冷気が彼の顔をさっと撫でたようだ。体をブルっと震わせ、肩に首を埋めて縮こまった。  やがて十分間の少テストが終了し、シャープペンの生徒の真っ白な解答用紙も、一番後ろの席の生徒が無情にもサッと回収していった。
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