新しい暇つぶし

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 (それにしても、和歌は自分のノートを貸してあげたかっただろうに、西くんが困らなかったからよかったって言っていたな……)  ふいに和歌の言ったことが耳によみがえってきた。なんていい子なのだろう。もし生きていたらぜひ友だちになりたいタイプだ。  でも……、もしかして。和歌に私は見えないかもしれないが、私が和歌を友達だと思ってもいいのかもしれない。和歌と一緒に過ごすうちに、私は和歌が好きになっていた。一方的だとしても、私が和歌を大事に思う気持ちは本物なのだから。  友達だと思っても……いいよね……?  (よし! ノートの他にも、何か和歌が西くんを手伝えることがあるかもしれない!)  私は気を取り直して、西くんに付いて回った。西くんの見ている世界は、和歌とはまた全然違った。西くんの背の高さに合わせて歩くと、それだけで風景が変わる。西くんはいい匂いだし、声も素敵だ。男の子どうしでふざけあうのを見るのも楽しいし、ちょっとドギツイ冗談ですらカレーのスパイスのようなものだ。  和歌の世界が春の日差しようなほんわかした暖かさだとすれば、西君の世界は初夏の風のような爽やかさだ。それに一緒にいるとなぜだか気持ちがすーっと落ち着くのはなぜなんだろう? ふわふわ漂っていると、ふと和歌が視界に入ってきた。  「和歌、やっぱり前髪をピンで留めて可愛くなったなー」と思わず独り言を言う。  幽霊になってから、誰にも聞かれる心配がないので、考えるよりも声に出して言ってしまうようになってしまった。和歌は廊下を友だち数人と歩いて行く。背が低いせいか、ぴょんぴょん跳ねるような和歌の足取りに、私の気持ちも浮きたつようでクスクス笑ってしまう。
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