復讐の座敷童

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 シャープペンの生徒にとっては魔の時間だったであろう英語の授業が終わると、彼は青い顔をして席を立ち少し離れた席の少年の机の横に立った。立ってみると背が高く、体つきも太めでがっしりとしている。  私は空中に浮かび、うつ伏せで頬杖を付いて聞き耳を立てる。さて、この子は反省したかな?  「さっきはどうも……」シャープペンの生徒は青い顔で言った。謝られた生徒は怯えるように目を見開いて、目の前にある顔を見つめている。  「もうやらないから」  座っている生徒は自分のペンケースにちらりと目をやった。折られた大量のシャープペンシルの芯が、バラバラと入っている。芯のケースの中身も空っぽだ。使えるシャープペンは机の上に出ている一本だけだが、それも授業の前に隣の席の女の子がくれた芯が三本入っているだけだ。  頭を下げていた生徒も、つられたようにペンケースに目をやる。そして初めて自分の行いに気が付いたように顔をゆがめると、ペンケースをつかんだ。  ギクリと座っている生徒が体をこわばらせる。つかんだペンケースで殴られるか、ペンケースの中の折れた大量の芯が頭から降ってくるとでも思ったのだろう。シャープペンの生徒は、そのくらいのことはやりかねないのだ。しかしその男子生徒はペンケースを手にしたまま、踵を返すと、教室の後ろにあるゴミ箱に折れた芯をザッと捨てた。ポンポン、と最後にペンケースの底をはたき、戻ってくると「ん」と言って、ペンケースを差し出した。  座ったままの生徒は黙っている。嫌がらせを受けたのは、今日だけの事ではない。今までやられたことを考えれば、ちょっと謝られたからと言って簡単に許す気になれないに決まっていると私も思う。
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