下校の時間

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 窓の外で、お天気雨がさあっと降ってすぐにやんだ。雲間から射した日が、雨に洗われた空気をキラリと反射して光った。  「虹だ!」生徒の誰かが叫んだ。校舎の窓から、いくつもの顔が空を仰ぐ。  ある教室で、体の大きな男子生徒が虹を見ようと隙間を探してウロウロしていると、小柄な生徒が彼の腕を引っ張った。 「お、サンキュ……」  頭の上からお礼を言う生徒を見上げるように、小柄な生徒が振り返って、「シャープペンの芯、君だろ」と言った。「新しい芯のケースが、筆箱に入っていた。誰がくれたのかわからなかったけど。あれ、きっと君だろう?」  後ろに立っている生徒は返事をしないで、ただ虹を睨むように見つめていた。  「ありがとう。虹、きれいだね」前に立っている生徒が言うと、「おう」とやっと一言答えて、二人で同じ虹を見た。  
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