復讐の座敷童

5/7
前へ
/35ページ
次へ
 毎朝、校舎の真ん中に位置する窓から、県立美環高校に登校してくる子達を見守るのが私の日課だ。そこは私のお気に入りの場所。朝日を斜め前からうけて、校門をくぐってくる制服の子達はみんな、キラキラ輝いている。  「おはよう!」私は今日も窓から乗り出して、大きく手を振り、一人ひとりに声をかける。  皆の楽しい高校生活を守ることこそ、私の使命なのだ。  復讐の座敷童、なんて恐ろしい名前で呼ばれている私も、つい二年前までは美環高校の二年生だった。二年前に突然の事故で死んでしまい、気が付いたら幽霊になってしまっていたのだ。つまり卒業していないОGだ。でも事故については幸いなことに何も覚えていない。もし覚えていたら、PTSD(心的外傷後ストレス障害)とかいうのになってしまうに違いない。  私が成仏出来ない理由は、おそらく心残りがあるからなんだと思う。でもそれは当たり前だ。花のJKだった私は、毎日を楽しく過ごしていたけれど、何かを為し遂げたわけじゃない。それに友達ともっと笑いたかったし、素敵な恋だってしたかった……。それだけで心残りの要因としては充分だと思う。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

82人が本棚に入れています
本棚に追加