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だからイジメは許さない。
上履きを隠されている子がいたら、夜中にそっと靴を戻しておいてあげる。そしてもちろん、隠した子の上履きは隠しておく。なぜなら言葉で諭そうにも、私の姿は見えないし声も聞こえないから、同じことをやり返すのが一番手っ取り早いのだ。それに同じことをされたら、否応なくやられた側の気持ちがわかると思う。
しかしいつも単純なイジメばかりじゃない。ある時には、意地悪に念を入れて、盗った上履きを泥で汚した子がいた。なんてひどいことをするのだろう。夜になると、私は怒りにまかせてイジメっ子の体操着で、汚れた上履きをゴシゴシこすって泥を落としてあげた。本当は汚れた上履きは洗ってあげたかったけれど、朝までに乾かなかったら困る。
そのかわりと言ってはなんだが、イジメっ子の上履きを、代わりにドロッドロに汚して、逆に隠しておいた。隠した場所は清掃用具が入っているロッカーの中だ。私が隠した上履きは、登校してきたイジメっ子が、教室や下駄箱をいくら探しても見つからないのに、掃除の時間には必ず見つかる仕掛けだ。
なぜ探しても見つからないのかというと、ロッカーはイタズラ防止のため、鍵がかかっているからだ。その鍵は担任の先生の机の中に保管されている。しかも職員室には、全校生徒が帰るまで、毎日最低でも一人は先生が残っている。誰にも見つからずに上履きを隠せる人間はいないとなれば、鍵を借りてまで探そうとは思わないのが普通だ。
隠せるものはいない……そう、夜の私以外には。
幽霊の私は夜になると少しパワーアップする。だから軽い物は持ち上げられるし、鍵を開けたりする位は簡単だ。夜の学校は無人だから、上履きが空中をぷかぷかと浮かんで移動し、ひとりでにロッカーに入るところを見られる心配もない。
やがて掃除の時間になり、どろどろに汚れた上履きが、掃除用具入れのロッカーに鎮座しているのが発見されると、「誰が、どうやって上履きを隠したのか……? しかも泥付きにして」というクイズが皆の頭の中に出題される。
(そんなことはできないはずなのに……。そうか! 復讐の座敷童が出たに違いない)と声にならない答えが、生徒達の頭の中を散歩し始める。そうなると上履きを隠した子ばかりか、クラスの子達全員が無言になり、血の気が引いた顔になったのが面白かった。
「ピンポン、正解です!」と、教えてあげられなくて残念。私はクスクス思い出し笑いをした。
だけどそんなことをしても、私としては意地悪のつもりじゃない。かわいい妹、弟を正しい道に戻してあげているつもりなのだ。
実際にその後、イジメをした子は気味悪がって、パタッとイジメをしなくなった。たまに繰り返す子がいるけれど、そういう子はイジメをやめるまで仕返しを続けるだけだ。なにしろ私には時間はたっぷりあるのだから。
だから私は復讐の…なんて、不本意だ。まあ、多少面白がっているのは否定できないにしても。
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