下校の時間

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(いた! ピンでナナメに留めた前髪、少し短くなったスカート。でもやっぱり、胸のリボンはギュッと固く小さく結びすぎ)  二階堂えりと二人で校舎に向かってくる和歌を見ていると、クスクスと笑いがこみあげてきた。こんな時でもいつもと同じ和歌に安心した。私は和歌の耳元でささやく。  「東館の三階の踊り場には、鏡がある。ちょっと行ってみようよ……。胸のリボンのかわいい結び方、教えてあげる……」  耳元で小さくささやいただけ。いつものように何十回も叫んだわけじゃない。だけど和歌は上履きに履き替えると「ねえ、ちょっと先に行っていて」と二階堂えりに言った。「どうしたの?」と聞くえりに、「ホームルームには間に合うようにもどるから」と答えると、小走りに東館に向かった。短くなったスカートが軽やかにひるがえる。  私は和歌と手を繋いで、隣を走る。二人のスカートが同じようにひらひら揺れる。  連絡通路を抜けたところにある東館は美術室や家庭科室などに使用されている。一般の教室はないので、朝の登校時間にはほとんど人は来ないのだ。がらんとした三階の階段の踊り場には、大きな鏡が壁に貼ってある。その前に立つと和歌の全身が映った。eed6601b-afb1-4776-873b-7c75817e5854
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