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西君と和歌のクラスでも、「虹が出ているよ」という誰かの声で、皆が窓辺に集まっていた。西君と和歌も挨拶を交わした流れで一緒に虹を見上げた。
「西君、手は大丈夫? 剥離骨折したんだってね」
「うわ、恥ずかしいー。知ってたの? 包帯目立つもんなあ……。シーネっていうので簡単に固定しているから痛くないよ。あの、そういえば前髪、変えたんだね」
「うん」和歌はうなずいて、胸のリボンをそっと手で触った。
「似合ってる。制服のリボンもその方がいいね」
照れくさそうな褒め言葉に、和歌の胸がまた跳ねる。そっと隣を見上げると西君は和歌を見て、目が合うとまた虹を見た。虹を見上げながら、西君と和歌は言葉を交わす。
「きれいだね」「うん、きれいだね」「ありがとう……」「ありがとう? なんで……?」「うん、なんでだろう? なんとなく……かな」「そっかあ……。でも、分かる。なんとなく……私も。ありがとー!」
和歌は虹に向かって言った。
虹は嬉しそうに、空に向かって七色に架かっていた。
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