ボクらは主観で生きている

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 大学に入学し、アパートに下宿し始めたころのことである。  真夜中にふと人の気配がするので目を覚ますと、目の前に私自身がいる。  ぼんやりとして薄い私だった。  客観は少しずつ調子にのるようになってきた。  客観の姿は、だんだんと濃くなっていったのである。  トイレのドアを開けると客観が座っている。  アパートのドアを開けるとベッドの上で客観が眠っている。  そのたびごとに、私は小さな悲鳴をあげて驚かされた。  ある日、空に気配を感じ見上げると客観が浮かんでいた。 私が足を止めて空を見ていると、他の人も不審に思い同じように見上げるが、何も見えないようで首をひねっている。  どうやら、客観は私にしか見えないらしい。
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