いつでもみてる

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たつき君の会社は不動産屋さんで、 普段は営業のお仕事をしてる。 田舎の余った土地を探して、 そこにアパートを建てたいという、オーナーさんを見つける仕事。 毎日毎日、車に乗って、 割り当てられた地域のお(うち)を一軒一軒、訪ねて回る。 玄関口で頭を下げて、 「けっこうです」と断られたり、 「警察を呼ぶ」と追い返されて、 ひどい時には渡した名刺をびりびりに破られることもある。 それでも毎回、笑顔を見せて、 「お邪魔いたしました」って言えるあなたはとてもえらいと思うの。 うまくいかない時が続くと、ため息がでちゃうこともあるけど、 それでもあなたは気を取り直し、次の目標に向かっていく。 夏まっさかりの暑い日は、滝のように汗がでるから。 立体駐車場に駐まって、こっそりお昼寝するたつき君。 (あんまり気張っちゃ体に毒よ。うまく息抜きしなくちゃね♪) 軽自動車の狭い車内で、座席を倒して寝転ぶあなた。 わたしはあなたのそばに座って、あなたの寝顔を独り占め。 なんてぜいたくな時間だろう。 なんてしあわせな時間だろう。 ファンだった他の子たちはみんな、勝手にどこかに行っちゃったけど、 わたしだけは、ずっといっしょよ? ずっとずっと、死ぬまでいっしょ。 わたしもう、死んじゃってるけど。 *
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