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ExH。HEART COREと呼ばれる機械と魔法のハイブリッド機関を核とした大人程の大きさの心あるロボット。人型であったり生物の姿を模していたり、COREの個性などに合わせた姿をしている。
遥か昔より存在したとされるが正確には不明であるものの、人々と共存してきた事実が存在し、昨今の発展もExHの存在あってこそというのは紛れもない事実。
ExH研究部に属するユウキはもちろん、全世界の人間はほぼ自分のパートナーとなるExHがいる。ハルトは、その中でも少数派とも言える持っていない人間の一人。
そんなこんなでハルトとユウキは校舎内を進み、ExH研究部のある旧校舎への外廊下にさしかかったその時、何かを察したユウキがさり気なく一歩下がり、ハルトは廊下のど真ん中で仁王立ちするカオリ・ヒメカワと目が合った。
「ハルト・グリュプス! 今日こそ入部してもらうわ!」
「ひ、ヒメカワ先輩!? えと、ゆ、ユウキ……」
よく通る声と共に指差されたハルトは後ずさりしながらユウキに助けを求めるが、後ろにユウキはおらずいつの間にか旧校舎側の離れた場所に移動しニヤケ顔を見せていた。
(わりーなハルト、あとは頑張れ)
(ゆ、ユウキの裏切り者〜!)
ウィンクしながらサムズアップするユウキを目の当たりにしてハルトは困惑するが、ずいずいと詰め寄ってくるカオリから逃げるように反転し、廊下を走り出す。
「待ちなさい!」
廊下を走り、階段を下り、生徒達の中を掻き分けてハルトは逃げるが、運動に関してはからっきしな上にカオリの方は運動もできる為にあっという間に追いつかれ首根っこを掴まれ引き摺られてしまった。
「せ、先輩やめてください! 痛いです!」
「うるさい! 男らしく覚悟決めなさい!」
手足をばたつかせ目に涙を浮かべるハルトを一喝して無理矢理何処かへとさらっていくカオリ。
生徒達の間では、この二人のやり取りというのは見慣れた光景。ハルトが掴まってカオリに引き摺られていくのがお決まりである。
見慣れた日常、しかし今回の結末はいつもとは違う形となる事となった。
ーーー
ハルトの引き摺られていく先は決まってExH研究部のある旧校舎の部室である。が、今回はそこへ入る手前でカオリが足を止め、ハルトもいつもと違う流れを察して何とか振り返ろうとするが、首根っこを掴む手は離れず脱出できなかった。
「あぁ、彼女がカオリ・ヒメカワ君です」
「が、学園長。それに……」
部室の前にいたのはこの日夜学園の学園長。親しみやすい人物であり、祭事を自ら発案する程イベント好きである。
そんな彼の隣には、燃える炎が画かれた黒コートを纏う目元を隠す仮面をつけた人物……グレイ・ブレイブがいた。
学園長の前というのもあってかカオリはハルトから手を離して制服の乱れを直し、学園長に紹介を受けたグレイと顔を合わせ一礼する。
一方、グレイは仮面の黄色いレンズ越しにカオリの顔を確認した後、後ろにておそるおそる頭を下げているハルトにも目を向けた。
(……なるほど、彼か)
グレイはハルトに懐かしい面影を感じつつ、学園長がカオリの側に立って紹介するのに耳を傾ける。
「ヒメカワ君、こちらの方は……」
「アメイジングハート、グレイ・ブレイブ監督です、ね。私達にとって憧れですから、よく知っています!」
学園長が紹介する前にカオリは答え、昂ぶる気持ちを抑えつつ憧れの存在が目の前にいるという現実をどう受け止めるか判断に迷っていた。
無論それはハルトも同じ、そんな二人の緊張を察してか「緊張しなくていい」とグレイは告げ、学園長の方に顔を向け「案内感謝します」と礼を口にする。
学園長もカオリの肩に手を置いてその場を後にし、しばしの沈黙の後グレイが口を開いた。
「話す時間を貰えるだろうか」
「は、はい! ほら、ハルトもさっさと頭下げる!」
緊張からかカオリはハルトの頭を無理矢理下げさせ、ハルトも戸惑いつつも素直に頭を下げ、上目遣いでグレイを改めて認識する。
「は、ハルト・グリュプスと言います」
「知っている。思っているよりも、話が早く進みそうだ」
意外、とも思えた言葉にハルトはきょとんとし、心当たりがあるのかカオリは胸の高鳴りを感じながらハルトの手を引き、手首につけたリング型デバイスを扉の認証機に触れさせ扉を開けた。
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