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巨大な穴の縁からのぞき込むと、井戸の中のように真っ暗である。
私が飽きずに眺めていると暗やみから小さな光が差してきた。
穴の底に誰かがいる・・・・・・。
それは、まるで地球の反対側から誰かがのぞき込んでいるかのようだ。
あのおじさんだ。
ニタニタ笑っている。
恐ろしく遠い距離なのにおじさんの顔がはっきり見える。
おじさんの右手には石が握られていて、それを口の中にほりこみ、ケラケラと笑い声を立てた。
「カー」
カラスの鳴き声が遠くに聞こえ、空を見上げた。
地面に視線をもどすと、穴は無くなっていた。
それから、私は二度と石蹴りをしなくなった。
(了)
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