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「阿呆」
「・・・なぬ?」
「君のような品格のまるで無い人間には丁度良い字だとは思わないかい?」
「なんじゃと。農民上がりの分際でなんちゅう無礼な口をきくんじゃ」
「ふん。やはり噂は正しかったようだな。ここに来る前にある人から『高杉の倅は我侭でそれはひどい癇癪持ちだと』聞いていてね。それに先日届いた桂さんの文では、君が藩校へ入学したと書いてあったんだ。近々僕も明倫館で勤める事になったし、どこぞでそれを耳にしたから『どうにも変わった男だがよろしく頼む』なんて書いてあったんだ。しかしこれでは藩校から追い出されるのもそう遠い話ではないだろうな」
「なんだと」
「まぁ。せいぜい頑張ることだ。高杉のご子息くん」
にんまりと眦を下げる表情は何ともおかしな雰囲気を纏っていた。
一言で言えば艶めいた微笑とでも表現した方が正しいかもしれない。
冷たい言葉を吐いた唇は、何とも美しい曲線を描いていた。
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