Dragonfly

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ずちゅ、ずちゅちゅちゅ、と厭らしい音が鼓膜を襲う。 「っは……あっ…ああっ!」 謎の体液によって解された孔は、簡単にキルヤンマの尾を受け入れてしまった。 そうなったら、もう、動くことも逃げることも許されない。 殺されたくなければ大人しくするしかないのだと、本能が察した。 キルヤンマの尾は気持ちいいものではなかった。 太い尾が入ってくる嫌悪感に奥歯を噛みしめる。 「ひ、いっ、あああっ」 だけど、もっと辛いのはそれがピストンの動きを始めた時だった。 奥に刺さったヤンマの尾が、逆方向に動き出して。 逆撫でされた尾毛がザクザクと中に突き刺さり、俺は悲鳴をあげる。 痛い… 怖い… 頭の中で、この2つの単語がひたすらぐるぐるした。 土を握り、地に額を押し付けながら、情けない格好のまま蟲に犯される。 何回か出し入れを繰り返され、そのうち、尾がグッグッと奥を突き刺すような動きをした。 まるで狙いを定めたような、位置をここに決めたかのような動きに、冷や汗が出る。 なにをするつもりなのか……考えたくもない。 考えたくないのに……孔の奥で、尾の先っぽにある産卵弁が…くちゃぁ、と開くのを感じた。 「い、やだ、やめろ…あ、やめ、やめてくれっっっ!!!」 泣き面で許しを乞いたところで、蟲相手に理解されるわけもなく。 その瞬間。 どぷぅっ…と、異物(タマゴ)が俺のナカへ注がれ始めたのだった……。 * 「いつまで、僕のパートナーをいたぶる気?」 その声に、蟲が驚き、慌てたように尾を抜いた。 急な動きにハッとして、意識を一瞬飛ばしていた事に気づく。 「んんっぅあ」 同時に、丸い異物が同じ場所から溢れ落ちた。 大きさはプチトマトくらい。 見た目と感触はタピオカのような……キルヤンマの卵だ。 いったい、どれくらいの量を注がれたのか…。 きっと、気を失っている間ずっと産み続けられたのだろう。 「離れなさい。」 再び、静かな声が後方から響いて。 その瞬間、全身がゾクゾクゾク、と粟立つ。 ……グレアだ。 ぶわぁッと感じたその視線(グレア)に、どこか懐かしさを覚える。 グレアは、蟲に効果がない。……はずなのだが。 あまりに強い怒りと攻撃性を感じるグレアに、さすがのキルヤンマも怯んでおり…… 「僕のエルから離れろ!」 そう、強く怒鳴られた途端、キルヤンマは素早い動きで飛びだって行ったのだった。 蟲から解放された俺は、力の抜けた身体をドサリと横に倒す。 そして、ぼやける視界を、声のする方へ向けた。 俺を『エル』と呼ぶのは、ひとりしかいない。 だけど、やっと助けに来てくれた、という安心と共に別の疑問が浮かぶ。 「ミディ、さま…?」 ミディのダイナミクスは、失われたはずだ。 それに「ああ。」と返された声も、なぜかいつもより低く感じる。 「よく耐えたね。もう大丈夫だよ。」 ふわ、と目の前に白衣が舞う。 見上げたそこには『青年の姿のミディ』が、はちみつ色の瞳を少し細めながら、安心した表情を浮かべていた。 見間違いではない。 そこに居るのは10歳の少年ではなく、もっと大人の…綺麗な顔立ちの青年だった。 「っ、ぅ……ミディさ…ま…」 聞きたいことも、伝えたいこともたくさんあるのに。 身体も心もボロボロだった俺は、ミディの腕に縋りながら、再び意識を手放してしまったのだった……。 *
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