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それに、相手の脳に直接アクセスする能力は、ぼくにも全くないわけじゃなかった。化かすことが出来ないだけで、こんな風に思念を交わすことは可能だったんだ。ひょっとしたらそれは、これまでもぼくの家族たちに伝わっていたのかもしれない。でも皆それを理解することも、反応を返すことも出来なかったんだろう。
だけど今、ぼくはとうとう「話が通じる」相手を見つけたのだ。これを手放すのはどう考えても得策じゃない。
"一緒に来るか?"
ぼくが問いかけると、
"ええ。いいわね"
彼女が応える。
ぼくらは並んで歩きだした。
ふと思う。バケモノ同士で子供を作ったら、やはりその子供もバケモノになるんだろうか。たぶんその可能性は高いと思う。そして、ぼくや彼女のようなインテリジェントな狐は、実は他にもいるのかもしれない。おそらくぼくらは、人間たちがまき散らした放射能が生み出した突然変異なのだろう。
そして、ぼくらの子孫がどんどん増えていけば……いずれ、「万物の霊長」などとほざき、ふんぞり返っている人間たちの足元をすくう存在になるかもしれない。
意図してなかったにせよ、お前らが結果的に生み出したバケモノは、お前らの座を奪おうと画策しているんだぞ。虎視眈々……いや狐視眈々と、な。
だから、首を洗って待ってろよ、人間ども。
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