18人が本棚に入れています
本棚に追加
ぼくが守った一番下の弟も、母親も、戻ってきた他の兄弟姉妹も……みな一様に、ぼくを畏怖の表情で見ていたのだ。まるでバケモノでも見るように……
ぼくは悟る。
やりすぎたのだ。ぼくは、狐という存在を飛び越えてしまった。
いや、狐どころか、こんな風に炎を使いこなす能力が備わっている動物なんか、そうそういるわけがない。そもそも、家族たちは皆ぼくが彼ら彼女らを救った、ということすら理解していないだろう。まして賞賛なんかするはずもない。
そして、居場所を失ったことに、ぼくは気付いた。
もはやぼくは彼ら彼女らの仲間ではない。まさにある種のバケモノになってしまったのだ。ぼくが読んできたいろんな物語でもそうだった。結局どんな組織でも、異分子というものは排除される運命にあるのだ。天才は常に孤独だ。
でも、それでいい。きっとこれは巣立ちの儀式なのだ。ぼくにもとうとうそういう時期が来た、ということなのだろう。
ぼくは家族たちに尻尾を向けた。
---
最初のコメントを投稿しよう!