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第11話 不安な胃カメラ(挿入編)
「ベットに横になって寝てください」と言われ、左耳を下にして寝そべった。「上の右足は前に出して、下の左足は後ろに引いてください。もっと全体的に後ろに下がってください。上の右腕は後ろへ置いてください。左手に注射をしますね」と早口で指示が飛んできた。言われるがままに従った。
マウスピースを口に付けられ、顔を少し下側へ傾け、よだれ垂れ流しの準備が整った。よだれと鼻呼吸を気にしていると、いつの間にか注射の針が刺さっていた。採血と麻酔の予定だが、確認する余裕はなかった。
緊張が高まり、マウスピースを軽く噛んでみた。「苦しくないですか?大丈夫ですか?」と看護師から問いかけがあり、軽くうなずいて答えた。心の中では「ちょっと待ってください。まだ気持ちの整理と、呼吸の準備ができてないです。こんなに質問されると無視できないです。マウスピース付けたら、もう質問しないでください」と叫んでいた。
呼吸が荒くなっていくのを感じたため、考えごとをやめて、両目を閉じて麻酔に乗ることにした。
ここで記憶が止まっている。麻酔の効果が出たのか、自分で寝落ちしたのかはわからない。睡眠中に『胃部内視鏡検査(胃カメラ検査)』が行われた。苦しさも、医師の姿も記憶がない。完全に寝ている間にすべてが終わっていた。
気づくと、ベットから起こされ、座った姿勢で、医師から検査結果を聞かされた。頭がボーっとしていた。色々と話があったが、頭に入ってこず、「問題なかった」ということだけ理解した。看護師に付き添われ、休養室のベットへ移動した。口の中のつばをティッシュへ取り、看護師に手渡し、ベットに横になった。記憶はまたここで停止した。すぐに眠りに落ちた。
「武藤さん、起きてください」の声で目覚めた。どれくらい寝ていたのか時間はわからなかった。ベットから起き、座った姿勢で看護師から胃カメラの結果が伝えられた。
「先生のお話は覚えてますか?麻酔であんまり覚えてないですよね。前回と同じく入口付近に小さなびらんがありましたが、悪いものではなく、他も問題ありませんでした。以上で終了になります。更衣室で着替えて、受付へ声をかけてください。お疲れ様でした」
今回の胃カメラ検査は大成功だった。初めてのときは、麻酔無しで大変だった。カメラをくわえたまま、胃の中が映っているモニターを医師に見せられ説明を聞いた。「最後に空気を入れて胃をふくらませますね。ゲップは我慢してください」と空気を注入され、苦しくなって呼吸がみだれ、パニックに陥りそうになった。カメラをくわえたまま、オエっとなり、鼻から呼吸が入らず、口呼吸をしても息ができず、苦しくなって、もだえてしまった。ベテラン看護師が背中を強くさすってくれる感触が今でも覚えている。
健康診断の仕組みが変わり、来年はバリウム検査で、再来年が胃カメラ検査と交互になっていくことになった。バリウム検査も苦しい記憶しかない。1年後まで考えたくない。
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