第2話 不安な健診準備

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第2話 不安な健診準備

 昨年の大腸がん検査で「便に血液が出ています。精密検査をお受けください」と判定されてしまった。泣く泣く、大腸内視鏡検査を受けた苦い経験が呼び起されてしまう。大腸がんは無かったが、あの検査は肉体的にも精神的にもつらいので、やりたくない。  検便キットにも不満がある。容器とビニール袋に名前や日時を手書きするのだが、いつも、書きにくい。欄も小さいし、ボールペンのインクがかすれたり、滑るような感覚の書き味も気持ち悪い。毎回、心の中でブツブツ文句を言いながら準備している。    2日分の検体取得も気が重い。1日1便のサイクルがずれたり、時間帯が自宅にいないときになっていると、ミッション達成が難しい。1週間前くらいから、トイレの時間が気になってしまう。    健診の2日前、運悪く、便秘気味になってしまった。便意を感じられない。お風呂の湯船の中で、下腹をマッサージした。赤ちゃんが便秘の時にやっていた「の」の字を書くマッサージを、「のの字、のの字」と口ずさみながら。腸の配置を意識して、おへそを中心に時計回りで、渦の中から外側へ押し出していった。お風呂から上がると、かすかな便意を感じ、トイレへ直行した。なんとか、ミッションをクリアすることができた。    健診の1日前、前日よりも兆候がなく、マッサージをしても効果がでなかった。21時以降は食事禁止となり、上から押し出す作戦も取れない。トイレに籠ってみたが、予兆を感じることができなかった。便座に座りながら、対策案を考え始めた。  案1:キットを開けて、閉めるだけで、やったことにする(血は絶対に出ない)  案2:前日のキットを開けて、2日目のキットにくっつける(1日目のキットが壊れてしまうかも)  案3:家族に代理をお願いする(昔、やらされた記憶あり)  案4:潔く、2日目は無しで、押し通す  案5:翌朝ギリギリまで、様子見  しょうもない案まで考えてしまった。粘っても、進展しなかったため、今回は無理だとあきらめ、翌朝まで様子見とした。  翌朝、偶然にも、なんとかミッションを成功させることができた。不思議な達成感を感じてしまった。  みんなこんなことしてるんだろうか?
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