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第5話 想定外の視力検査
次は『視力検査』に案内された。のぞき込む視力計が小さなテーブルの上にあり、丸椅子に座った。「コンタクトは付けてませんね?」と確認があり、自信をもって「はい、つけてません」と答えた。
「では、はじめますね。アルファベットのEの文字で、開いている方向を言ってください。1番は?」
いつものフレーズが聞こえてきたが、視力計の中を見て、驚いてしまった。Eの文字がどこにもない。初めて見る画像だった。バスの絵が描かれていて、椅子の下に1~9の番号が振られていた。全体を何度も見渡しても、Eの文字は無かった。何も答えることができなかった。
「あ、すみません、ダイヤルが間違ってました。切り替えますね」と看護師さんが慌てて視力計のダイヤルを回すと、いつものチャート版が出てきた。
「では、1番は?」「右です」
「2番は?」「左です」
「3番は?」「上です」
「4番は?」「右」
「5番は?」「左」
スラスラと答えることができ、気分が良かった。
看護師さんは想定外の結果だったみたいで「あれ?もしかしてレーシックされたんですか?」と問いかけてきた。看護師さんの手元にある記録票に前回の実績が印字されていて、前回との差が激しいことに気づいたみたいだった。
「えっと、白内障の手術をしました。今年の8月。あ、去年の8月です」と緊張気味に回答した。看護師さんは問診票を確認しはじめ、病歴欄の白内障にチェックがあることを確認し、「そーだったんですね」と一言いって検査を再開した。
「9番は?」「左です」
「10番は?」「下」
「11番は?」「右」
「12番は?」「見えません」
「はい、終了です。視力1.2で、良く見えてますね」と言ってくれた。「12番は見れなかったのに、そうなのかな?」と不思議に思いつつも、視力検査が終わった。
自宅に帰り、あのバスの絵が気になり、Google先生に質問してみた。ハンドル4番は斜位検査用で、バスの中で何番の座席に人が座っているかを答える検査であることがわかった。斜位は斜視とまでは行かないが、視線がずれている状態で、疲れ目の原因になる。偶然の出来事が、眼の勉強になった。
でも、このバスの絵は2度と見る機会はないんだろうなあ~と思った。
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