人救い

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人はどうしようも無い生き物だ。冴え渡った感情で知能と機能を操って暴虐の限りを尽くす。そして、そんな人間の亡くなって残る魂の成れの果てが私達「幽霊」だ。この社会は幽霊と人の共存社会なんかでは無い、簡単に言うならば人間が幽霊を無視している感じだ。そして幽霊である私は今でも未練たらっしく廃墟ビルの屋上で町を眺めている。そんな幽霊Lifeを暮らすものだと思っていた、一人の少女がこの屋上に来るまでは……。 幽霊Lifeが崩れたのは冬のことだった、中学生位の少女が屋上に上がってきたのだ……。その少女はなかなかに酷いものだった。パッと見で目立つクマ、バシバシの髪の毛、有り得ないほどの汚れと傷の付いた制服……。私は何故か彼女に話し掛けてしまった。 「どうしたの君?鍵開いてるからって勝手に入っちゃダメでしょ!」 私は声音を明るくしてそう言った、すると少女は私の予想通りのことを言った 「死にに来たの」 少女の言葉にはなんとも言えない重みがあった。目の前で自殺されるのは気分が悪過ぎる……。私は問い掛けた、「ねぇ何があったの?私に話してみてよ」 少女は小さい声で、学校でイジメられていたこと、どんなイジメをされたかを私に話した。私は大声で笑った。面白いコメディを見たかの様に、少女は 「何が面白いの!?」癇癪を起こす一歩前の様な声で怒鳴った。私は怯むことなく彼女にこう言った、「こんなに面白い話久しぶりに聞いたわ笑 また明日もその面白い話をしてくれよ!」憎ったらしく煽る様にそう言った。少女は泣き出しそうな顔で帰っていった。 次の日のことだった、少女はまた自分に起きた出来事を話に来た。次の日も、次の日も、その次の日も自分の不幸話をする為に屋上へやって来た。そして私達は次の日を繰り返した……。 その頃には少女は高校生になっていた。そして彼女の口から不幸話が出ることも無かった。 少女は突然こう言った。 「正直に言うならあなたに可哀想、そう思って貰う為に話しに来てた……けどあなたの反応を見てたら死ぬのが悔しくなった 、言い方を変えるならあなたのおかげで生きようと思えた、だから今幸せになれた。」彼女は輝かしい笑顔でそう言った。私は言うべきでは無い、そう分かっていて言ってしまった……「ねぇ私の話を聞いてくれない?」少女は「いいよ」そう返した。私は自分の過去を語った。 私は小学生6年生位の頃、カースト上位のグループに目を付けられた。そしてイジメは始まった……そのイジメは私が死ぬ「その日」まで行われた。その間にも不幸は嫌というほど続いた、少しずつ私の人生の歯車は狂った。狂いに狂ってグチャグチャになって原型もとどめれなくなった……私はこのビルから飛び降りた、と。彼女の目からは涙が流れていた、彼女は深くは言わなかった一言「ありがとう」そう言った。私と彼女の物語は終わった。 「また退屈になったな……」私はそう呟いた。 すると屋上に入る為のドアが開いた。
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