インスタント愚行

11/11
前へ
/11ページ
次へ
 インスタントカメラは奇跡的に無事だったが、俺はあれ以来セルフヌード撮影会を固く禁じている。  亜美ちゃんからも次に開催したら別れると言われているし。  こうしてつつましい生活に戻ったある日のこと。  インターホンが鳴ったので出てみると、見知らぬ男性が立っていた。 「えと……」 「あ、隣に住んでいる者の息子です」 「はあ、えーと。何の御用でしょうか?」 「この度、父が引っ越すことになったものでご挨拶に……」 「ああ、それはご丁寧に」 「父の要望で一人暮らしを続けさせていましたが、そろそろ限界の様で……。今後は一緒に住もうと……」  その時、外から怒鳴り声が聞こえた。 「おい、いい加減にしろ。ワシは正気じゃ。異世界の神に召喚されて、魔王と戦ったんじゃ!!」  勘弁してくれよ、言わんばかりに彼は顔をしかめ、そのままそそくさと去って行った。  何となくその言葉に引っかかりを覚えつつ、俺は玄関の戸を閉めて鍵をかけた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加