インスタント愚行

　生まれたままの俺、大登場。
　まず手を精一杯伸ばし、インスタントカメラのレンズを自分に向ける。
　結構デカいので、両手がいるなぁ。
　ていうか、これじゃピントが合ってるかどうかわかんない。
　自動調節機能とかついてんのか？
　それに、ちゃんと全身が入っているんだろうか……。
　ポーズもつけにくいなぁ。
　うわー、スマホの自撮りカメラって、スゲーんだな。
　これが温故知新という奴か。
　日々何かしら学びがある。人はそうやって成長するとかしないとか。
　素っ裸で考える事じゃないね。

　どうしたもんかとしばし悩む。
　亜美ちゃんが協力してくれていれば、こんなに悩まなくても済んだものを……。
　亜美ちゃんを俺が撮るなら、きちんとピントの調節もできるし。
　あるいは誰かが俺の写真を撮ってくれれば……。
　そうだ、鏡に映った自分を撮ればいいのだ。
　左右反転するから、ひょっとすると予想外に新鮮な写真が撮れるかも。

　……別に、自分の裸を丹念に見たくてやってるんじゃないんだからね。