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のめり込み、バケモノになる
「それがこの玉ってことですか?」
「そうだ」
「その都市伝説って、この町では有名なんですか?」
「ああ……都市伝説だと、思っていたんだがね……」
町長は急に言葉を濁した。
『思って“いた”』とは、どういうことなのだろうか。
「さて、行こうか」
「え?」
「巡回、今日は新人連れて私が行ってくるよ」
そう、受付にいた人に声をかけ、話についていけない私を町長は外へ促した。
町長の言葉に受付の人が安堵の表情を浮かべていた気がした。
「巡回ってなんですか?」
車に乗り込む町長に、私は助手席のドアを開けながら聞いた。
「町民の生活を見守るのが私たちの仕事だからねぇ」
町長は答えになっていない答えを返してくる。
たぶん、これ以上は今聞いても無駄だろうと、黙って車に揺られることにした。
数分走り、住宅街の中にあるコインパーキングに車を止め、町長は歩き出した。
私は無言のまま後をついていく。
そして、ある家の前で立ち止まった。
この辺りは割と裕福な家庭が多いのか、立派な一軒家が並んでいた。その中でも特に立派に見える家。しかし、よくよく見てみると違和感があった。
「聴こえるかい?」
違和感の正体について思いを巡らせていた私に町長が声をかける。
「聴こえるって?」
「ピアノの音」
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